一つには、バブル崩壊後、企業はコスト削減や管理強化によって業績を維持する傾向が強まり、社内が官僚化した。この結果、スケールの大きな人材が育ちにくくなったためと考えられる。グローバル化などで日々の経営が忙しいため、わが社以外のことを考えるゆとりが減ったという事情もある。
それではいけないということなのか。経済同友会が憲法問題委員会を設けた。「経営者も国の在り方のような大きな問題を考えようというわけだ」と小林喜光代表幹事は狙いを語る。結構だが、論争を巻き起こすような成果を出せるのか。経済界の人材日照りは一朝一夕では解消しないだろう。
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【プロフィル】森一夫
もり・かずお ジャーナリスト。早大卒。1972年日本経済新聞社入社。産業部編集委員、論説副主幹、特別編集委員などを経て2013年退職。著書は「日本の経営」(日本経済新聞社)、『中村邦夫「幸之助神話」を壊した男』(同)など。67歳。