2015年のOECD加盟国の時間当たり労働生産性【拡大】
東京都世田谷区の閑静な住宅街。ヤマト運輸のセールスドライバー、中谷昌城(40)はインターホンを押した。しかし返事はない。再配達を受け付ける「ご不在連絡票」にペンを走らせながら、中谷は時間をおいてもう一度、インターホンを鳴らした。
「年配の方は玄関に出るのに時間がかかることもあるので」と、配慮の理由を説明する。留守を確認すると、中谷は新聞受けに不在票を差し込み、駆け足で次の配送先に向かった。
中谷が1日に受け持つ宅配物は約150~200個。午前8時~午後9時までの勤務時間から休憩時間を除くと、1個当たりの配送に掛けられる時間は3~4分しかない。一方で、配達時に不在のケースは平均2~3割に上る。「夜9時までの時間帯指定は、いつもぎりぎり」だという。
無料の再配達や時間帯指定配達、生鮮品の配送先が不在だった場合、再配達依頼がなくても再び訪問する-。こうした日本の宅配便が提供するサービスの手厚さは、世界でも類を見ない。元会長で宅急便の「生みの親」でもある小倉昌男が掲げた「サービスが先、利益は後」という経営哲学の結晶だ。
しかし、SMBC日興証券アナリストの長谷川浩史は「市場を切り開いてきた企業精神が、宅配便のビジネスモデルを窮地に追い込んでいる」と指摘する。