鉄は原料の鉄鉱石を高炉に投入した後、石炭を蒸し焼きにしたコークスのガスと反応させ、酸素を奪うことで取り出す。この「還元反応」の過程でCO2が排出される。その排出量は、鉄の生産量にほぼ比例し、削減にはおのずと限界がある。これに対し、コース50ではコークスの一部を水素に置き換えることを目指している。この水素還元法なら、酸素と反応しても水になり、環境負荷がほとんどないためだ。
ただ、問題もある。高炉内部に水素を吹き込むと、鉄鉱石が細かく砕けて粉状になって炉内に充満し、水素や熱風が流れにくくなる。また、反応が進むと「吸熱反応」によって高炉内の温度が下がり、熱不足に陥ってしまう。
そこで08年度からの「フェーズ1」では、12年度までの第1段階で要素技術を開発。さらに13年~17年度の第2段階では、新日鉄住金の君津製鉄所(千葉県君津市)内に試験高炉を設置し、より実際の操業に近い環境で問題点を洗い出してきた。
約80億円をかけて15年10月に完成した試験高炉は、高さ約6.5メートル、容積12立方メートル。実際に使われている高炉の最大5000立方メートルよりは小さいが、試験高炉としては世界最大となる。