【知恵の経営】需要創造型の日本人形作り (1/2ページ)

2017.5.15 05:00

 □アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明

 独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となって高収益を維持している中堅企業を紹介している。今回は日本人形の製造販売を行う、ふらここ(東京都中央区)の池クジラぶりを見ていきたい。

 同社は2008年、原英洋社長が45歳で創業した。実家は人間国宝の祖父・原米洲氏の代から始まる人形師の家系。母は女流人形作家の原孝洲さんだ。日本人形の業界は完全な製販分離で、職人個別の作品を専門店が組み合わせる形で自社ブランド化して販売してきた。

 父親の急逝をきっかけに母親の会社に入った原社長は、店頭に立つうち、ものづくりの現場と顧客との乖離(かいり)に気づいたが、職人には「そこまで(顧客に)迎合する必要があるのか」と聞き入れられなかった。時代が変わり、若い母親たちが購入決定者の9割を占めても顧客の意見が反映されることはなかった。

 あるとき娘の初節句に両親からひな人形を贈られた若夫婦から「飾りたくないものを贈られても困るので返品したい」という電話がかかり、同様の声が何件も寄せられた。原社長は「お客さま目線を持たず旧態依然と人形を製作していては、やがて確実に限界が来る。ひな人形の歴史は1000年といわれているが、時代の変遷とともに、形はもちろん、風習ですら変化してきたはず」と危機感を募らせた。「お客さまが本当に求める人形を作りたい」との思いから独立した。

 原社長は、若い母親たちの声を反映した人形作りに挑戦した。職人の反発も大きかったが一切妥協せず、さらに購入決定権を持つ若い母親に近い年齢層の女性を採用し、原社長に共感する若手職人と積極的に提携して常識に縛られない意見を取り入れた商品づくりを行った。

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