【ベンチャー支援の現場から】由紀精密 試作加工で宇宙分野の黒子役に

2017.5.17 05:00


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  • 宇宙ベンチャーから試作を請け負う由紀精密の工場=神奈川県茅ケ崎市

 ■由紀精密・大坪正人社長

 宇宙でのさまざまなニュービジネスを展開するベンチャー企業が続々と台頭している。その宇宙ベンチャーを陰で支えている町工場が神奈川県茅ケ崎市の由紀精密だ。民間気象情報会社のための超小型衛星の筐体(きょうたい)や国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の船外に取り付けられた実験装置などにも関わり、宇宙関連分野の売上高は全体の30%前後にも達する。

 由紀精密が宇宙分野に参入したのは10年ほど前のこと。もともとは公衆電話に使われる部品などを作り、業績は1991年がピークだった。しかし、携帯電話の普及で公衆電話関連の仕事は減少。その後、光ファイバーのコネクターも手がけるが、2001年にITバブルが崩壊。多額の設備投資をした直後で大きな負債を抱え、会社は窮地に追い込まれた。

 06年、当時31歳だった大坪正人氏が入社。常務として、会社の長所や短所、設備や資産などを分析。「公衆電話の精密な部品を手がけており、信頼性の高さには定評がある。大量生産ではなく、他品種少量の品質が要求される部品に舵(かじ)を切るべきだ」と考え、航空宇宙と医療機器の分野への参入を決意した。

 一方、宇宙ベンチャーのアクセルスペース(東京都中央区)が民間気象情報会社ウェザーニューズから北極圏の流氷を観測する人工衛星を受注。本体に組み込まれる部品の試作加工先を探していた。アクセルスペースはインターネットで由紀精密の存在を知り、早速、依頼した。

 民間による人工衛星なのでコスト削減は最重要課題。衛星の筐体内の基盤を置くアルミプレートの加工では、「部品の形を変え、太い工具を使って短時間で加工できるようにした。また相対的に精度が必要なところは仕上げ工程をまとめて行う」(大坪社長)といった工夫を凝らした。

 由紀精密は宇宙関連メーカーのOBを顧問として採用。経験を基に生え抜きの社員に技術面のアドバイスをしてもらった。

 アクセルスペースの中村友哉社長は「由紀精密ならきっとやってくれる」と全幅の信頼を置いている。

 一方、人工衛星やロケットの残骸などといった宇宙ごみの課題解決に挑むのが、シンガポールに本社を置くアストロスケールだ。同社設立2年前の2011年、由紀精密はパリ航空ショーで記念品として直径1センチのコマを持ち込んだ。後にアストロスケール代表取締役となる岡田光信氏は、そのコマを大量に買い込んだ。

 やがて大坪社長と岡田氏はフェイスブックを通じて交流をはじめ、同じ大学の出身だったことから意気投合。資本提携にまで話が進み、14年、由紀精密はアストロスケールを引受先とする第三者割当増資を実施した。

 「われわれはものづくりの担当。宇宙ベンチャーが考えた夢を形にする」と話す大坪社長。「宇宙に限らず、ものづくりで世の中の課題を解決できる企業でありたい」と目を輝かせた。

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【プロフィル】大坪正人

 おおつぼ・まさと 東大大学院工学系研究科修了。2000年インクス(現ソライズ)入社、06年由紀精密に入社し常務、13年社長。42歳。神奈川県出身。

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【会社概要】由紀精密

 ▽本社=神奈川県茅ケ崎市円蔵370

 ▽設立=1961年7月

 ▽資本金=3500万円

 ▽従業員=33人

 ▽事業内容=金属加工、航空宇宙や医療機器関連部品の開発や試作、加工など

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