製紙最大手の王子ホールディングス(HD)は18日、水処理事業に参入すると発表した。製紙で培った処理技術を生かし、産業排水などに含まれる有害物質のカドミウムを効率的に除去する装置をこのほど開発、企業や自治体向けに売り込みを始めた。今後5年間で40カ所に納め、売上高で年間数十億円規模の事業に育てる。
開発した水処理装置は、カドミウムを薬品によって固形の粒子に変えた後、独自の濾過(ろか)膜で除去する仕組み。薬品の処方に独自ノウハウを活用したほか、特殊な濾過膜を採用した。一般的な水処理で使う濾過槽や沈殿槽が不要で、従来の3分の1の費用で4倍以上の処理が可能なほか、設置面積も抑えられるという。
日本では2014年12月に水質汚濁防止法が一部改正され、カドミウムの排出規制が強化されたばかり。このため、排水処理装置のニーズも高まりつつある。
一方、東南アジアでは経済成長を背景に工業用水の需要が増加している。同社では今後5年間で国内20カ所に加え、タイやベトナムを中心とする東南アジアでも20カ所に納めたい考え。国内の紙需要が減少するなか、収益源の多様化を図る。