□スパイダー・イニシアティブ代表 森辺一樹
多くの日本企業は今、自分たちの製品やサービスを海外へ売ることに躍起になっている。国内は少子高齢化と内需縮小が著しいため、外需の取り込みが非常に重要だからだ。海外でも特に加速度的な成長をみせているアジア新興国への展開が、今の日本企業のグローバル事業の主戦場になっている。
そんな中で知っておきたいのは、日本と海外とでは、同じ製品でも使い方が全く異なるケースが多々あるということだ。これをしっかりと理解し、自分たちの製品やサービスが現地でどのような成長を遂げていく可能性があるのかを見極めていくことは、日本企業が海外で成功する鍵となるだろう。
例を挙げれば、スマートフォンなどの携帯端末でSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やチャットアプリを利用するときに、日本では基本的にテキスト(文章)でやりとりをする。その際に、日本人が生み出して世界的ブームにもなった絵文字やスタンプを駆使するのが一般的だ。
これに対して、海外、特に中国や華僑系の人たちは音声を用いることが多い。スマホの送話口を口に近づけて、ボタンを押しながら音声メッセージを吹き込んで相手に送る。そして、相手から音声メッセージが届くと、今度は送話口を耳に当てて聞く。
読者の方々も、中華系の人が道を歩きながら、買いものをしながら、1人で携帯端末に向かって話し、口と耳に送話口を行ったり来たりさせている光景を見たことがあるだろう。
このような使い方は、日本人はまずしない。もちろん、日本人もSNSやチャットアプリに音声メッセージを送ることができる機能が付いていることを知ってはいるが、われわれの感覚では音声でメッセージを送るのは何となく恥ずかしい。留守番電話に吹き込むのが苦手だという人も多いだろう。