【酒豪女子が行く】(6)“伊勢角屋イズム”が炸裂 名門ブルワリーが「奥の手」を繰り出した絶品ビール (2/3ページ)

 またまた一口グイッ。

 「えぇ、全然違う!」。赤みがかった琥珀色やフルーティーな香りはそのままだが、口に含んだときの印象はガラッと変わり、全く別のビールに生まれ変わっていた。口当たりはさらにシャープになり、なんといってもガツンとした苦味と「のどごし」の刺激が一層際立っている。飲み込むと口の中には爽快感が残り、それでいて鼻の奥に華やかなホップの香りが広がり、思わず余韻に浸ってしまう。隣でテイスティングする出口ブルワーも、飲んだ瞬間パッと目を見開き、「これこれ!」と言わんばかりにうなずく。それにしてもたった2時間で一体どんな隠し玉を繰り出したのだろうか?

「二度美味しい」大人のビール 伊勢角屋の技術は“ココ”に光る!

 「炭酸を強めたんや。のどを通るときのヒリつきが増して、『辛口』らしくなったやろ」(出口ブルワー)。隠し玉は意外にもシンプルだったが、素人目にはたったそれだけでここまで味が一変するとは思えない。経験に裏打ちされた技術とはいえ、いとも簡単に味を操作してしまうとは、さすが腕利きのヘッドブルワーである。

 産経読者を意識した“遊び心”も満載だ。「冷やせばキレのある清涼感が楽しめて、少し常温に近づくと豊かでまろやかな味わいになる。1本で二度美味しい『大人の楽しみ方』ができる」(出口ブルワー)。いかにも“クラフトビール”らしい濃い色合いだが、それとは裏腹なすっきりした味わいに仕上げ、目にも口にも楽しめるような工夫をこらしたと語っていた出口ブルワーが、ここでも熟年層が満足できるような仕掛けをほどこしてくれた。

 テイスティングにかこつけて何杯も飲んでいたが、伊勢角屋麦酒の技術が光るのはまさにこの「ドリンカビリティ」である。ドリンカビリティとは「おかわりしたくなるか」「飽きずに飲み続けられるか」といった、もっと飲みたいかどうかを測るビールの評価基準。馴染み深い大手のラガーに比べ、クラフトビールの定番としてよく飲まれているエールビールはふくよかで濃い味わいのものが多いため、「すぐ満腹になる」「おかわりするには重たい」といったイメージを抱く人も少なくない。

「これは美味しい」「かなりガツンとくる」