【高論卓説】かんきつ類とアゲハ類の盛衰 垣間見た生物の共進化が愉快 (1/2ページ)

2017.6.26 05:00

 私は、山口県下関市の彦島で生まれ、高校卒業までこの島で育った。本州と九州を分ける関門海峡に本州側から突き出た小さな島だ。この辺りは温暖でかんきつ類の生育に適しており、それを食草とするアゲハ類が昔も今もたくさん飛んでいる。昆虫少年だった小学校以来約50年間アゲハ類の盛衰を見てきた。

 小学校の頃、この辺のアゲハ類は、カラスアゲハ、アゲハ、モンキアゲハの3種がほとんどだった。図鑑によると、カラスアゲハは野生かんきつ種(カラスサンショウなど)を好むとある。一方、アゲハとモンキアゲハは栽培種(ミカンやハッサク、夏ミカンなど)と野生種(カラスサンショウなど)の両方を食べる。

 ところが、中学生になった頃、ナガサキアゲハやクロアゲハが次第に見られるようになった。ナガサキアゲハのような大型で派手なアゲハの出現に、昆虫少年として興奮しつつ、不思議に思っていた。大学生の頃は、むしろクロアゲハやナガサキアゲハが、モンキアゲハよりも多くなっていたと思う。

 それらは、栽培種のかんきつ類を好むと図鑑にはある。その頃彦島では、田畑が埋め立てられて宅地が急速に広がっていた。そして、どこの家もその庭にミカン、夏ミカン、ハッサクなどを植えた。これらを好むクロアゲハやナガサキアゲハが増えたのは当然のことかもしれない。

 さて、それから30年近くたって、帰省の折に見てみるとモンキアゲハとカラスアゲハが増え、ナガサキアゲハはかなり数が減少している。つまり、種分布が小学校の頃に戻っている。高齢化とともに人が林の中に入ることが減っているため、山道を歩くとかつてより木が茂っている。

 カラスサンショウなどの野生のかんきつ種が、人の入らない林の中で大きく繁茂していると思われる。モンキアゲハとカラスアゲハの増加はこれを反映しているのかもしれない。

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