東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の売却手続きにはまだ曲折がありそうだが、売却が完了して債務超過を解消できたとしても「東芝再成長」への道のりは険しい。半導体と並ぶ柱だった原子力発電事業も海外事業から撤退。新たな屋台骨に据える社会インフラ事業は国内向けが中心で、収益が伸び悩んでいるからだ。(万福博之)
東芝の平成29年3月期連結決算で本業のもうけを示す営業利益は2700億円だが、このうち売却する半導体メモリーを含む半導体事業で2400億円を稼ぎ出した。東芝メモリを売却すれば、利益の大半が失われる。
東芝は、不正会計の発覚後に白物家電や医療機器子会社を売却。そして米原発事業の巨額損失を受け、東芝メモリも売却する。経営危機のたびに成長事業を切り売りした結果、実質的に「解体」が進んでしまった。
ピーク時の20年3月期に7兆6千億円あった売上高は32年3月期には4兆2千億円まで減少する見通しだ。事業規模でもライバルの日立製作所(29年3月期の連結売上高約9兆円)の背中はさらに遠のく。
東芝が残された事業の中でエレベーターや鉄道などの社会インフラ事業を新たな柱としたのは、規模が大きいからだ。公共工事なども多く、一度受注すれば保守・管理などで継続的な実入りが見込める安定的なビジネスでもある。