東芝が東芝メモリの売却をめぐり、提携先の米WDと訴訟合戦に突入したことで、今後の売却手続きに不透明感が強まってきた。優先交渉先である官民ファンドの産業革新機構を中心とする日米韓連合の買収提案は、両社の対立解消を前提としているからだ。
詰めの最中
「正直、驚いて何も言えない」。東芝によるWDへの提訴に日米韓連合の関係者はこう口にした。
東芝は21日に日米韓連合を優先交渉先とすることを決め、契約の詳細部分で詰めの交渉を行っている。連合には関係者が多いだけに調整に手間取り、綱川智社長が公約とした28日までの契約には間に合わなかったが、「月内には何とかこぎ着けたい」(東芝関係者)と詰めの作業を急いでいた。その最中に東芝自らが新たな火種をまいた。
東芝はWDの横やりで東芝メモリの売却交渉が遅れていただけに、対抗措置をとってWDに揺さぶりをかける狙いがありそうだ。
WDは自社の同意なしに売却することを「契約違反」と反発。対立解消に向けた東芝との協議もことごとく不発に終わった。WDは売却差し止めを求めて米裁判所などへの提訴に踏み切っており、早ければ来月にも売却差し止めの仮処分裁定が下る可能性がある。