パナソニックの4つの社内分社のうち、太陽電池や車載機器などを手がける2社は門真市に、白物家電などの1社は滋賀県草津市に、それぞれ今後も本社を置く方針だ。それだけに、樋口氏の門真脱却宣言に戸惑う関西企業関係者は多かったという。
「遅すぎた」判断
樋口氏は顧客が東京に集中していることを移転の理由に挙げ「みんなでお客さまの近くに行く」と語った。事実、工場の稼働を効率化するIoTのサービスや旅客機の座席に備え付ける映像・音響(AV)機器事業の9割近くの顧客は東京にいるとされる。
またCNS社が手がけるサイバーセキュリティー事業では、競合他社のほとんどが東京に本社を構える。同業他社の幹部は「サイバー対策に取り組む関西企業は東京より圧倒的に少なく、大阪で事業をしてもメリットはない」と話す。
パナソニックの東京シフトはむしろ「遅すぎた」という指摘も多い。
同じ関西発祥の有名企業であるサントリーホールディングス(HD)は昭和50年ごろから、ビールやウイスキーなど主要事業の機能を東京に移してきた。大阪よりも人口の多い東京を選ぶのは「自然な流れ」(サントリー社員)だという。
進まない地方移転
一方、政府は平成27年、東京一極集中を回避するため、本社機能を地方に移転した企業を対象とする優遇税制を創設した。