■失敗許容し競争力の強化を
来年3月卒業の大学4年生は就職活動の真っ最中だが、一部上場企業、名前を知っている企業への就職を求める親が多い。安定、安心を求めるわけだが、親が知っている企業には限界がある。それに従う学生も少なからずいる。子供の自立への大きな障害になっており、就職して3年で約3割の学生が転職することにもつながる。もちろん転職が悪いと批難しているわけではないが、仕事へのモチベーションとも関係してくるはずだ。
また大学と父母会が開催している学生の父母との懇談会で就職率を紹介したところ「なぜ100%ではないのか」と聞かれたことがある。100%を求めるとは、失敗を許さないことと同じだ。しかし大学は元来「失敗する」「躓(つまず)く」を許容し、やり直しを認める文化を持つ。失敗しない人生、やり直しがきかない人生はないからだ。失敗した学生にやり直しの機会を与えるのが大学だ。
だからこそ学生には大学生活の中で人間力、すなわち総合力、人間の幅、器量・度量などを養ってほしい。高校までは学習指導要領により選択の余地はないが、大学は学生自らが選択してカリキュラムを組む。成功しても失敗してもすべてが自分の責任となる。こうした中で自分とは何なのか、何のために大学に入ったのかを学ぶ。主体的かつ自立的に大学を選び、「何のために」という考えをもって入った学生はやる気もあって見ていて頼もしい。