東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の売却をめぐり、米ウエスタンデジタル(WD)が売却中止の仮処分を求めた提訴で、米カリフォルニア州の上級裁判所は28日(日本時間29日)、2度目の審問で売却差し止めを認めなかった。東芝にとって追い風となったものの、東芝メモリをめぐる係争は国際仲裁裁判所に持ち越された格好で、訴訟リスクはくすぶり続けている。
「本番は仲裁裁で売却差し止めが出るかどうかだ」と東芝関係者は語る。WDは仲裁裁に「売却にはWDの同意が必要」と主張して差し止めを申し立てており、米裁判所への訴えはそれまでの手続きを止める仮処分を求めたものだった。
仲裁裁の審理は秋にも始まる見通しだ。ただ、裁定が出るのは1~2年かかるため、WDは仲裁裁で予備的に売却を差し止める暫定保全措置を求めるとみられる。早川吉尚・立教大法学部教授は「仲裁裁が裁定まで今の状態をとどめるべきだと、措置を認める可能性がある」と指摘する。仮にそうなれば、東芝は苦しい立場に追い込まれる。
暫定保全措置が取られなければ、東芝は手続きを継続できるが、その後の裁定でWDの主張が認められれば、売却手続きが済んだ後でも売却自体が無効と判断される可能性がある。