東芝が半導体工場第6棟の単独投資を決めたのは、東芝メモリの売却をめぐり係争中のWDを“兵糧攻め”にして、提訴取り下げなどの譲歩を引き出すのが狙いだ。WDとの対立解消にめどが立たず、目標とする来年3月までの東芝メモリ売却が不透明になる中、強硬手段に打って出た。
「状況が変わらなければ刀を抜くしかない」。東芝関係者はこの言葉を繰り返してきた。
東芝にとってWDとの係争は東芝メモリ売却の最大のネックだ。WDは売却を契約違反として、国際仲裁裁判所や米裁判所に差し止めを求めて提訴。米裁判所は差し止めを認めなかったが、仲裁に持ち越しただけで訴訟リスクは払拭できていない。
売却の優先交渉先に選んだ産業革新機構を中心とする「日米韓連合」の売却契約も係争が足かせとなり、1カ月以上足踏みしている。半年以上かかるとされる契約後の各国の独占禁止法の審査を勘案すると、デッドラインは近づいており、刀を抜くしかなかった。