【高論卓説】多民族国家オーストラリアの変容 治安強化、相互不信の助長も (1/2ページ)

 調査でオーストラリアを訪れたのは1991年11月のことだった。バブルの影響もあって東京一極集中が加速、その是正が叫ばれていた頃だ。私たちは、遷都の経験のある国や連邦制など地方分権を基本とした国家統治のシステムを持つ国を片っ端から調べては訪問し、報告書をまとめていた。経団連が、首都機能移転と地方分権の実現を真剣に考えていた時期にあたる。

 訪れたシドニー、キャンベラ、メルボルンでは、移民国家として多民族が共存することで経済成長を実現し、社会の活力を維持していけると信じて疑わない人たちと、政治、経済、社会のテーマで意見交換した。

 インタビューに応じてくれた連邦および州の政治家、行政官、民間人からは、英連邦に属する国家として、懐の深いところを見せたいという意識がとても強く感じられた。

 インタビューの合間に街に出ると、オーストラリアではない国の国旗を持ちパレードする一団に出くわした。ちょうどソ連崩壊や東欧革命に端を発して、バルト三国やクロアチアが独立するなど、欧州が大きく揺らいでいる時期だった。恐らく、それらの国々をルーツとする人らが行進していたのだろう。それぞれの民族の文化、宗教を掲げても否定されない多文化共生のトップランナーがオーストラリアだったというわけだ。オーストラリア訪問の目的である連邦制度の仕組みや、その実際の運用などを調べたことも鮮明に記憶に残っているが、やはり自身のルーツを他者に伝えてもいさかいの起きにくい国という印象がより強く残っている。

 そのオーストラリアが先日、警察や情報機関、国境警備隊を束ねる「内務省」の新設を発表した。イスラム過激派によるテロを念頭に置いたものであり、モデルは英国だという。「内務省」の設立は来年の予定で、ターンブル首相は会見で、「国内治安の改革では、この40年以上で最も重大」と強調している。

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