出光興産で元社長の天坊昭彦氏(77)が相談役を退いた後、顧問に就任したことが21日、分かった。昭和シェル石油との合併に反対する出光創業家が批判していた相談役制度を、6月末に廃止したことに伴う対応。経営再建の功労者とされ、経営の内情に詳しい天坊氏を顧問として残すことで、難航する合併の実現に一役買ってほしいとの期待がありそうだ。
創業家側は6月に開かれた定時株主総会で、相談役に関し「著しく高額な報酬で破格な待遇だ」と非難していた。天坊氏の顧問就任は横滑りに近い形だが、相談役に比べ、経営から距離を置く狙いがあるとみられる。
出光は顧問について「社内外を問わず、経験や知見を持ち、必要な方なら登用する」と説明しているが、業務の詳細を明らかにしていない。
天坊氏は2002~09年に社長を務め、06年に東京証券取引所第1部への上場を果たした。従来の経営陣は非上場を貫いていたが、経営難を背景に、天坊氏は市場から資金調達が必要と判断した。
一方、企業の相談役と顧問をめぐっては、業務や権限が外部に分かりにくいとの批判が高まっており、東証は氏名や報酬の有無の開示を求めている。今後、出光の対応が創業家ら株主の理解を得られるかが焦点だ。
合併は、出光が今年7月に増資したことで創業家の議決権比率が低下し、否決が難しくなったため、計画が進展する可能性が高まっている。