近年は、岩手県産品の取扱業者と協力し、全国各地の物産展に参加するなど県外への販路拡大を進め、東京都内の岩手県のアンテナショップや、横浜市内の百貨店に売り場を開設。さらに、岩谷堂箪笥の技法を応用した生活雑貨の通信販売にも力を入れていた。しかし、主力の高級箪笥の販売は伸び悩み、過去の設備投資に伴う借入負担ものしかかり今回の措置となった。
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【会社概要】旅人舎
▽本社=東京都新宿区
▽設立=2001年12月
▽資本金=7000万円
▽負債額=約2億4000万円
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【会社概要】藤里木工所
▽岩手県奥州市
▽設立=1982年5月
▽資本金=2600万円
▽負債額=約4億2000万円
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〈チェックポイント〉
旅人舎は第1種旅行業登録の中堅旅行業者だった。業界では3月に「てるみくらぶ」が破産し、約9万人の旅行者に被害が発生した。海外のテロ事件発生や為替変動によるコスト上昇などは旅行業者に厳しい経営を迫っている。業者に対する保護も必要だが、消費者は利用する旅行業者の経営チェックも必要だろう。
藤里木工所は岩手県奥州市の伝統工芸品「岩谷堂箪笥」を製造し、経済産業省の伝統的工芸品の指定を受けていた。しかし、1棹数十万円もする高級箪笥は日本の住環境の変化の中で、需要が減少していることは否めない。日本の伝統工芸存続と企業経営の現実が結びつかないのは残念である。(東京商工リサーチ常務情報本部長 友田信男)