躍進の背景には電力・ガスのセット割引に加え、1都6県に約200店の拠点網を持つ「ライフバル」など系列販売店の営業力がある。保安業務が不可欠なガス器具を扱うライフバルは地域に密着し、顧客からの信頼も厚い。ライフバル関係者は「修繕や開閉作業などがあるガス業界は家庭への入り込み方が違う」と胸を張る。
東ガスの広瀬道明社長も、「電気とガス両方できるのは、お客さんにとってもワンストップ(一括サービス)でいい」と自由化の利点を強調する。今秋に発表する20年度までの中期経営計画では、家庭用電力販売の契約目標を一気に200万件に引き上げる方針で、急成長にも手綱を緩める気配はない。
電力、ガス両業界の因縁は深い。1872年に横浜市で日本初のガス灯がつき、74年には東京の銀座通りに86基のガス灯が輝いた。20世紀に入るとガスはかまど、ストーブ、湯沸かし器、レンジなど用途を広げる一方で、ガス灯が電灯に代わったのを皮切りに電力業界が追随。近年は給湯やIH調理器など「オール電化」が、ガス業界を脅かしてきた。
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■価格・サービス 事業者の総合力
だが、東日本大震災後のエネルギー政策の見直しが、ガス事業者に自由化というチャンスをもたらす。原発停止に伴う電気料金値上げが家計を圧迫。安さを求めて供給元や料金メニューを見直したくても消費者が思うようにできないことなどが契機となり、競争を促す自由化が進行。政府は昨年4月に電力小売りを家庭向けまで広げた。今年4月にはガスの小売りも全面自由化され、異業種も含めた激しい市場争奪戦が繰り広げられている。