綱川社長は医療機器部門の出身で、「合議を重んじるタイプ」と社内外で評される。元社長で不正会計を主導したとされる西田厚聡(あつとし)、佐々木則夫の両氏がトップダウン型で独断専行しがちだったのとは正反対だ。東芝幹部は「人の意見を聞き、でも腹が固まったら動じない。今は彼しかいない」と綱川社長の慎重姿勢を評価するが、主要取引銀行や経産省内では「調整型」の経営手法が裏目に出ているとの見方も強まっている。
半導体経営は「素人」との声も
売却交渉の遅れに拍車を掛けているのは、社内の対立だ。関係者によると、いったんはWD陣営に決まる寸前までいったが、半導体事業を統括する成毛康雄副社長らが猛反発し、押し戻したという。成毛副社長はもともと、半導体畑が長く東芝メモリの社長を務める。普段は温和だが、意見は曲げない「武闘派」(東芝関係者)とも評価される。
そもそも、東芝の半導体部門はWDへの拒否感を示しており、「社員は一様に日米韓連合を推している」(銀行関係者)という。
今さら売却を妨害しているWDとの関係を修復するのは困難との認識が広がっているためだ。パートナーはWDではなく、同社が2016年に買収した米サンディスクとの意識も強い。WDはハードディスク駆動装置(HDD)のメーカーで、「半導体経営は『素人』」(関係者)との声も上がる。