しかし、13年1月に那須塩原市、15年4月に青森県八戸市に製造拠点を新設したことで借入金が急増。大手コンビニエンスストアへの販売収入を返済原資に見込んでいたが、案件の長期化などで業績は計画を大きく下回り、資金環境は急速に悪化。金融機関への返済や仕入れ先への支払いに支障を来すようになった。17年3月期の売上高は約4800万円にまで落ち込み、事業継続が困難となった。
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【会社概要】安田商事
▽本社=北九州市八幡東区
▽設立=1948年10月
▽資本金=2000万円
▽負債額=約21億2100万円
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【会社概要】抗菌研究所
▽本社=青森県八戸市
▽設立=2009年9月
▽資本金=4500万円
▽負債額=約27億5900万円
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〈チェックポイント〉
安田商事が扱うステンレス鋼材は市況相場の影響も受けやすく、同社の財務は過去からの赤字を内包していた。これを一気に吐き出して、債務超過に陥ったことで対外信用を失った。赤字でもオープンにし、積極的な財務情報の開示に努めることで新たな可能性をつかむことも期待できたのではないだろうか。
抗菌研究所は環境技術への貢献が期待され、さまざまな分野から引き合いがあった。これに応えるために生産能力を増強したが、設備投資で失敗した。
企業にとって設備投資のタイミングは難しい。特に工場などへの巨額投資は会社の運命を握り、あらゆるケースを想定したうえで実施すべきだろう。(東京商工リサーチ常務 情報本部長 友田信男)