東芝の本社が入るビル=13日、東京都港区【拡大】
東芝が東芝メモリ売却で「日米韓連合」を軸に交渉する方針転換をしたのは、本命だった「日米連合」を主導する米ウエスタン・デジタル(WD)が条件闘争で譲らず、合意が難しいと判断したからだ。訴訟や迫る売却期限といった弱みを突かれ、強気な姿勢を貫くWDに対する不信感が改めて浮き彫りになった。ただ、日米韓連合にも訴訟リスクがくすぶり、着地点ははっきりと見えていない。
「訴訟で恫喝(どうかつ)し、自分たちの経済権益を取りに行っている」
関係者は憤りを隠さない。
東芝は8月中旬から日米連合と集中的に交渉を進めてきた。WDによる国際仲裁裁判所への提訴が障壁になって他陣営との交渉が進まず、来年3月末までの債務超過の解消に向けた期限内の売却完了が危うくなったからだ。交渉に影響力を持つ経済産業省も東芝の背中を押した。
だが、交渉がようやく着地するかに見えたところで埋めがたい隔たりがあらわになる。WDが東芝メモリの将来の経営に関与することを示唆。三重県四日市市の半導体工場で生産配分などを有利な形にすることも求め、主要顧客の米アップルから不評も買った。
極めつけは、先週の交渉でWDが東芝に対し買収資金の一部にあたる2000億円を融資の形で出すよう求める新たな条件を示したことだ。財務状況の厳しい東芝に巨額の貸し付けを求めたことに東芝は憤慨。交渉を後押しした経産省もさすがに閉口した。