EVに残されている「三重苦」 なぜトヨタは本格参入を決断できたのか (2/4ページ)

プラグインハイブリッド車「プリウスPHV」のカットモデル
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 EVの三重苦とは何か

 EVといえば、日本では日産「リーフ」や三菱「アイ・ミーブ」が2010年頃に発売され、最近では街中でも見かける“普通のクルマ”になってきた。

 とはいえ、トヨタの「プリウス」や「アクア」、最近では日産「ノートe-POWER」など、エンジンとモーターを併用するハイブリッド車がエコカーの主流であり、EVはまだまだ”特殊なクルマ”というイメージを持っている人が多いはずだ。

 なぜEVはなかなか普及しないのか? そこには、“EVの三重苦”がある。

 第一は、航続距離が短いことだ。目いっぱい充電しても、ガソリン車を満タンにして走れる距離と同じレベルに達するEVはほとんどない。アメリカのテスラの場合、ガソリン車と同様の航続距離を可能にしているが、それは、モデルによってリーフの3倍から4倍に相当する大容量のリチウムイオン二次電池を搭載しているからだ。これがコストに直結して車両価格が高くなっている。テスラは高級車というブランド戦略なのでコストを吸収できるが、他のクルマでは取れない手法だ。

 第二は、生産コスト。EVの主要な構成部品は、モーター、バッテリー、そしてインバーターなどの制御装置である。車両の価格競争力を確保するためには、これらの電装品を大量に、しかも継続的に調達しなければならない。だが、EV市場の今後については自動車メーカーそれぞれがさまざまな見方をしており、リーフやテスラの事例はレアケースだ。順当な方法としては、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車向けに開発した部品を転用、または改良することが考慮される。

 第三に充電インフラの問題だ。自宅のコンセントから交流100Vで充電すると、一般的なEVが満充電するには、一晩以上かかる。また、電力会社に工事を依頼して自宅に200Vの交流充電器を完備しても、電池容量にもよるが5~8時間くらい長時間の充電が必要になる。駐車場が家から遠い、タワーパーキングであるなどの理由で、そもそも自宅の駐車場で充電できない人も多いだろう。

トヨタがEV参入を決めたワケ