【環境経営に挑む 積水化学工業】(8)大規模植林による炭素固定化推進

マングローブの植林風景。3年間で120ヘクタール植林予定
マングローブの植林風景。3年間で120ヘクタール植林予定【拡大】

  • 合成木材「エスロンネオランバーFFU」
  • 下水道管路を更生する「SPR工法」

 新環境中期計画では、自然環境と社会環境を対象として貢献する製品、サービスを新たに30件以上創出してくことを宣言している。新規に対象となる製品としては、たとえば、検査薬や介護関連サービス、新興国向けの上下水道や輸送・交通インフラを構築するプラスチック製品などがあげられる。

 また、自然環境と社会環境の双方の課題解決に大きく寄与する製品・サービスもいくつかある。下水道管を更生する「SPR工法」はそのひとつである。

 日本には約45万キロの下水道管があり、耐用年数の50年を超えた管の比率は20年過ぎには約10%になる。

 SPR工法は、地面を開削し、既設の下水道管を撤去することなく、老朽化した管の内部に硬質塩ビからなる帯状の材料をせん状に巻きつけ管を更生する工法のため、“資源の枯渇・廃棄物削減”といった側面で自然環境に対して高い貢献効果があり、加えて日本を含め先進国が抱えるインフラの老朽化という社会環境面の課題解決に貢献する。

 「世界こどもエコサミット2017」の見学先である千葉積水には、SPR工法の実機を設置。そのデモンストレーションは、子どもたちの間で最も人気が高かった。

 この中期計画では、自然あるいは社会環境に対して貢献する製品の新しい価値を訴求し、社会を啓発していくだけではなく、この価値を高めるための市場拡大も積極的に行っていく。たとえば、ウレタン樹脂発泡体をガラス長繊維で強化した軽量耐食構造の合成木材「エスロンネオランバーFFU」は、そのひとつ。

 FFUは、軽い、強い、腐食しない、そして加工性に優れるという特長を生かし、国内で鉄道用の合成まくらぎ用途では、高いシエアを得てきた。2018年から欧州での環境規制によって新規敷設が禁止される薬剤処理された木製枕木を代替する材料として今後はさらに輸出にも力をいれていく。

 このように環境貢献製品の市場拡大を図り、3年間でグループの全売上高の60%以上を目指している。

 温室効果ガスの削減に向けた対策も一段と強化する。

 日本は、2020年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」によって、30年度に13年度比で26%削減することを約束しているが、それ以上の削減を目指す。19年度には6%以上の削減を実現し長期的な目標に弾みをつける考えだ。

 まずは売上高の0.3%以上に相当する120億円の環境貢献投資枠を設定。設備投資を支援する環境投資促進策や、温室効果ガスの排出量削減に大きく寄与した事業所を社長表彰する「温暖化対策優秀賞」の新設などの検討を進めている。

 環境投資促進策としては、パイプ関連製品の成型機更新や照明のLED(発光ダイオード)化など設備申請、更新が始まっている。

 従来は、意識啓発的な従業員教育の位置づけであった自然環境保全に関しても、将来のクレジット認証なども視野に入れて、炭素固定に有効なタイのマングローブ植林を拡大していく方向に転換している。年間あたり40ヘクタールの植林を3年間行うことを決め、2017年度分の植林はすでに終了している。タイの同社グループの排出CO2量を相殺する量の固定化を推進していく狙いである。

 長期的には、生産革新やエネルギー消費量を削減するものづくり革新や、エネルギーの調達や使い方を変えることでCO2削減を実現するエネルギーミックス革新の基盤を形成。事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟する「RE100」の事例など参考にして施策検討を図り、カーボンクレジット認証なども視野に入れながら、30年、50年の大幅削減に向け検討を進めていく。

 パリ協定が正式に採択されたCOP21や、国連が提唱する地球の持続的成長のための目標であるSDGs、投資家によるESG評価など、環境に関する社会の要請は多岐にわたっている。企業の社会的責任はさらに重要になってきているだけに、新環境中期計画の遂行は、企業価値を高める上で重要な役割を果たす。

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【会社概要】積水化学工業

 ▽設  立=1947年3月

 ▽資 本 金=1000億200万円

 ▽従 業 員=23006人(2017年3月期連結)

 ▽売 上 高=1兆657億7600万円(2017年3月期連結)

 ▽東京本社=東京都港区虎ノ門2-3-17

 ▽事業内容=住宅、環境・ライフライン、高機能プラスチックスの3カンパニー制