【高論卓説】「リアル書店」が生き残る道 カフェ併設型が人気、カギは“体験” (2/2ページ)

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 9月9日、東京・日本橋浜町にオープンしたカフェを併設した書店「HAMA HOUSE」もそんな書店の一つ。日本橋浜町は都心の一角であり、多くの企業が事務所を構える地域。多くのマンションが林立し、職・住の拠点として再開発が進んでいる。ところが、周辺で働く人や住む人が気軽に集えるおしゃれなスペースがない。そこで地域の核となる場所を作ろうと、企画会社good morningsが「HAMA HOUSE」をプロデュースした。

 水代優代表は「人が集まる場所作りに絶対に必要なのが本棚。そこに並んでいる本が場所の表情を作る。そのため、新刊書籍の販売は欠かせない」と言う。

 飲食併設型では先鞭(せんべん)を付けたのが、5年前に東京・下北沢にオープンした「B&B」。生ビールも売っている書店である。同書店を運営する博報堂ケトルの嶋浩一郎社長は「高度経済成長期ならまだしも、今の時代に粗利22%の書籍販売だけをやっていてももうからない。であれば本だけでなくビールも売るし、有料のイベントも行う。おかげで初年度から黒字経営を続けている」と胸を張る。オンライン書店にはできない、リアル書店ならではの「体験」を提供することが鍵といえるだろう。つまり、「本を並べているだけで売れた幸せな時代は終わった」(嶋社長)のである。

 実は、アマゾンだって米国ではリアル書店の運営に乗り出している。ここで打ち出しているのも、リアル書店ならではの「体験」を提供すること。レビューの高い人気書籍だけを並べるコーナーを作るなど陳列に工夫を凝らしている。

 書店は「知恵の勝負」になった。それは本や雑誌が売れないことに悩み続けている出版社も同じ。出版社だって、新たな「体験」を提供できなければ、早晩立ち行かなくなる。新しい価値を創造できるかどうかが勝負の分かれ目になりそうだ。

【プロフィル】山田俊浩

 やまだ・としひろ 早大政経卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。「週刊東洋経済」の編集者、IT・ネット関連の記者を経て2013年10月からニュース編集長。14年7月から東洋経済オンライン編集長。著書に「孫正義の将来」(東洋経済新報社)。