日本の石炭火力、カギ握るIGCC 「パリ協定」背景に発電方法でCO2の“逆風” (1/3ページ)

常磐共同火力が運営する勿来発電所のIGCC=9月、福島県いわき市佐糠町大島
常磐共同火力が運営する勿来発電所のIGCC=9月、福島県いわき市佐糠町大島【拡大】

 日本の発電量の3割以上を占める石炭火力発電に逆風が吹いている。東京電力福島第1原子力発電所事故後は原発稼働の停止に伴い、安定的で安価な電力として新増設計画が相次いだ。だが、温暖化防止の国際的枠組み「パリ協定」を背景に、環境省などが液化天然ガス(LNG)火力の2倍にも上る二酸化炭素(CO2)排出量を問題視。計画の見直しや中止の動きが出始める中、CO2を削減するクリーン技術の開発が急務になっている。このままで日本の電力は大丈夫なのか。

 新増設計画見直し

 9月下旬、東電などが出資する常磐共同火力の勿来(なこそ)発電所(福島県いわき市)。大型トラックがひっきりなしに出入りし、黒光りする石炭を貯炭場に運び込んでいた。

 従業員は「約10キロ離れた小名浜港から輸入炭を運んで来るのです」と説明した。同発電所は出力25万~60万キロワットの火力4基を運転し、年間約350万トンの石炭を使用。約100台のトラックが小名浜港から1日10往復し、運搬する。同発電所は常磐地区で採掘されていた低品質の石炭を活用する目的で1955年に設立した。原料が輸入に代わった現在も全4基が燃料とする石炭との関わりは深い。

 ただ、敷地の三方は住宅街に囲まれる。石炭火力は窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)など有害物質の排出量がLNGなどに比べて多く、環境に細心の注意が必要になる。同発電所は脱硫装置の研究などにいち早く取り組み、現在は全量排煙脱硝・脱硫装置を設置。燃料の一部に木質バイオマスを混ぜるなど、「環境や振動、騒音には万全の対策を取っている」(細田誠一所長)。

安価かつ安定もCO2排出量がネック