保険業界の海外M&A活発化 円高是正で「高値づかみ」課題 (1/2ページ)

※写真はイメージです(Getty Images)
※写真はイメージです(Getty Images)【拡大】

 保険業界で海をまたいだM&A(企業の合併・買収)が活発化してきた。人口減少と日銀のマイナス金利政策で経営環境が悪化している国内勢と資本規制の強化に対応するため事業の選択と集中を進める欧米勢との思惑が合致しているのが背景だ。

 保険業界では、保険監督者国際機構(IAIS)が音頭を取る形で、国際資本規制の強化が議論されている。保険会社は新たに将来の保険金支払いに充てる「負債」と、保有する債券や株といった「資産」の時価評価が義務付けられる方向だ。

 導入後は「資産」から「負債」を差し引いて算出する「自己資本」が変動しやすくなる。今のような低金利環境では、自己資本がより減りやすくなるため、各社ともリスク管理に神経をとがらせている。さらに欧州では、これとは別の枠組みで規制強化が始まっている。

 MS&ADから出資を受け入れる英リアシュアは、体力の弱い生保から既存契約を買い取る事業を手がけている。親会社のスイス再保険はここに外部資本を入れることで、より長期安定的な運営ができると判断した。

 このほか、米マスミューチュアル・フィナンシャル・グループは合理化の一環で、日本法人のマスミューチュアル生命保険の売却先を探していた。日本生命保険が早期の買収合意を目指し、交渉している。

 日本勢としては、世界的に株高が続き、円高も是正された中での買収は「高値づかみ」になりやすいのが課題だ。それでも、大規模金融緩和が続き、「低金利での社債発行や銀行借り入れがしやすくなっていることが背中を押している」(業界関係者)という。(米沢文)

保険大手の海外生保買収の動き