【ビジネスアイコラム】「行動経済学」が解く日本経済停滞の謎 (3/3ページ)

 仮に増税で家計から巻き上げた税金相当分を全額、教育・社会保障などで家計に還元するとして、経済理論通りに消費には打撃を与えないのだろうか。実際には、家計は増税前に駆け込み消費に殺到する。そしてその後は、一挙に財布のヒモを締める。教育支援などでカネがばらまかれてもそっくり消費に回すだろうか。多くの家計は消費の水準を抑制し、政府から支給されるカネの大半を貯蓄に回すのが、消費者心理だ。この行動原理は増収分の一部を家計に返す場合でも変わらないはずだ。財政は緊縮、家計は消費抑制というパターンになり、デフレが続くことに変わりない。

 希望の党の「消費税増税凍結」はどうか。増税をしないで教育や福祉を充実させようとすれば、「財源はどうするのか」と自公両党やメディアから突っ込まれる。小池百合子代表は苦し紛れに「ワイズスペンディングで」と横文字で答える。公共事業など財政支出の削減で捻出するというわけだ。かつて「コンクリートから人へ」「事業仕分け」という民主党政権のデフレ無視政策に限りなく近寄ってくる。「増税凍結」という現実に即したまともな政策が有権者の心理に響くはずはない。

 消費税を争点にするなら、主要政党は心理学論争でもしてみてはどうか。(産経新聞特別記者 田村秀男)