東芝半導体買収、WD幻の勝利宣言 「法で威嚇」過信の果て暗転 (1/5ページ)

ウエスタン・デジタルの工場のロゴ=マレーシア・ペナン州(ブルームバーグ)
ウエスタン・デジタルの工場のロゴ=マレーシア・ペナン州(ブルームバーグ)【拡大】

 米ウエスタン・デジタル(WD)のスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)は東京で勝利宣言する寸前だった。発表予定の声明の草案が用意され、握手シーンを撮るためカメラマンたちも呼ぼうとしていた。それは自身のキャリアのクライマックスとなるはずだった。

 しかし実際には、ミリガン氏がカメラにポーズを取る前に交渉は中断していた。結局その数週間後に東芝メモリの売却先に決まったのは、WD陣営でなく、ライバルの米投資会社ベインキャピタルが主導する陣営だった。WDのCEOとしての功績で最大の誤算となった。

 金額以外の配慮欠く

 東芝が8カ月前に入札を開始したとき、ミリガン氏率いるWDには他の買収候補より優位性があった。それは東芝とのメモリー事業での合弁パートナーとして、ライバルを脅かすために使える可能性のある法的効力だった。

 だが結局、ベインが交渉の最終段階で、東芝の最大顧客の一社である米アップルの介入に助けられ、2兆円でこの案件を勝ち取った。ミリガン氏には金額以外の部分への配慮が欠けていた。

 マッコーリーキャピタル証券のアナリスト、ダミアン・トン氏(東京在勤)は「非常に多くの利害関係者がいたが、取引は常にタフで、WDにはもっと巧妙さが必要だった」と指摘する。「これは本質的にイチかバチかのポーカーゲームで、WDは自身の手口を過大評価していた」という。

 WDやミリガン氏、東芝はコメントを拒否した。この記事は、匿名を条件に取材に応じた複数の関係者へのインタビューに基づいている。

ミリガン氏のWDトップまでの道のりは険しかった