東芝半導体買収、WD幻の勝利宣言 「法で威嚇」過信の果て暗転 (4/5ページ)

ウエスタン・デジタルの工場のロゴ=マレーシア・ペナン州(ブルームバーグ)
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 入札競合に訴訟示唆

 ミリガン氏はその後数カ月にわたり買収のためにあらゆる手を打った。5月に一方的に国際仲裁裁判所に事業売却中止で仲裁を申し立て、6月には米カリフォルニア州の裁判所に売却の差し止めを求めた。ライバルの入札者は、WDから訴訟をちらつかせる手紙を受け取ったという。

 9月上旬までは、こうした威嚇は効果を発揮していたようだ。ライバルのベイン陣営の主要な投資家はWDを恐れた。官民ファンドの産業革新機構と日本政策投資銀行は、訴訟が解決されるまでは支払いには応じられないとし、経済産業省もWDの支援に回った。早期決着を求める取引銀行もミリガン氏を勝利させることが最速の方法だと考えていた。

 しかし、ミリガン氏らが祝杯を準備する中、企業買収の世界で何十年もの間、数々の激しい競争を戦い抜いてきたベインは諦めていなかった。東芝メモリの案件では、早くから優先交渉先の地位を獲得するなど一度も有力候補の座を譲ったことはなかった。

 WDのミリガン氏が自陣営がまだ優位にあると思い込んでいた9月初旬、買収資金上乗せのため新規の投資家が必要だったベインはアジア事業担当のデイヴィッド・グロス・ロー氏らが、アップルのティム・クックCEOと面会するため米加州クパチーノに飛んだ。アップルがサムスンとWDによるフラッシュメモリー市場の独占による価格上昇を懸念していたからだ。アップルはベインに対応を一任した。

事業締め出しに懸念