【評伝】西室泰三元東芝社長 「命懸け」経営、時代とずれも

 3つの重責を担っていた2015年夏の姿が記憶に新しい。社長を務めていた日本郵政などグループ3社の上場準備を進める一方で、戦後70年談話に関する政府の有識者会議の座長として、報告書の取りまとめに心を砕いていた。

 同時期には、かつて社長を務めた東芝で不正会計が発覚。相談役として社外取締役候補者らを説得し、経営を刷新した。79歳にして激務の後でも、毎日のように自宅近くで記者の取材に一人一人応じる姿はさながら“超人”のようだった。

 しかしその後、東芝は米原発子会社の経営でつまずき7000億円超の減損損失を計上、さらに窮地に追い込まれた。この原発子会社を06年に買収した当時の意思決定に、大きく関わったとされる。既に社長を退いていたが、影響を持ち続け、社内で「スーパートップ」と呼ばれていたほどだ。

 日本郵政社長としても、15年の豪物流会社買収を主導したが、その結果、約4000億円の減損損失が発生。今年、2つの巨額損失に関与したことが話題になり、大きな批判を浴びることになった。

 「私は命懸けでやっているんだ」。晩年、東芝の取材で訪れた同僚記者に覚悟を語ったこともある。

 しかし、相談役として長期間経営に関与する姿勢は、新しい時代のコーポレートガバナンス(企業統治)には合わなくなっていた。16年の日本郵政社長退任後は、表舞台に姿を現すことはなかった。(高橋寛次)

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