【高論卓説】大手メーカーで相次ぐ検査不正 「器用な現場」への経営者の甘え (1/2ページ)

神戸製鋼所神戸本社の外観=神戸市中央区(沢野貴信撮影)
神戸製鋼所神戸本社の外観=神戸市中央区(沢野貴信撮影)【拡大】

 「安全安心」「安心安全」と空念仏を唱えているうちに、安全確保を現場の職人芸に丸投げする危うさを生じさせてしまったのではないか。大手製造業による品質検査をめぐる不正行為の背景に、そんな甘さを感じる。

 神戸製鋼所の製品検査データ改竄(かいざん)、日産自動車やSUBARU(スバル)での無資格者による完成車検査と、相次いで問題が表面化した。

 経済同友会の小林喜光代表幹事は記者会見で、神戸製鋼と日産の問題に関して、こう述べている。「(経済同友会でも)これを他山の石とし、自分自身の問題として見直す良い機会にしたい。そうでないと、日本が築き上げたブランド価値は毀損(きそん)され、甚だしく落ちていくという危惧を持っている」と。

 不正はいずれもかなり長期にわたって常態化していた。

 神戸製鋼の検査データ改竄の期間は、10年はくだらないようだ。日産では無資格者による検査が「40年前から」と報じられている。スバルでは「30年前から」だという。

 これらが原因で事故や不具合が起きたという報告はまだない。神戸製鋼は10月26日の記者会見で、不正な製品の納入先525社のうち約8割で「安全性」が確認されたと言っている。

 納入先と決めた品質基準やJIS(日本工業規格)に外れた製品を出荷しても、直ちに危険とはいえない。品質基準は余裕を持たせて決めているので、大きく下回らない限り、使い物にならないわけではないからだ。

 現場の検査員は、検査数値が基準を満たさなくても、使用に堪える製品はデータを偽って合格にしていたのだろう。日産やスバルは、無資格者とはいえ、それなりに技能を持つ者に検査させていたらしい。完成検査は国に代わってメーカーが行い、検査員の資格認定の基準も各社に任されていた。

思い出す東京電力の記録改竄