【高論卓説】大手メーカーで相次ぐ検査不正 「器用な現場」への経営者の甘え (2/2ページ)

神戸製鋼所神戸本社の外観=神戸市中央区(沢野貴信撮影)
神戸製鋼所神戸本社の外観=神戸市中央区(沢野貴信撮影)【拡大】

 思い出すのは、2002年に発覚した東京電力による原子力発電所での自主点検記録の改竄である。シュラウド(炉心隔壁)に経年変化でできたヒビを記録しなかった問題である。当時、運転中の原発については維持規格がなかったため、こうしたヒビを正直に報告すると、大ごとになるので現場で隠して処置していたのである。

 社長を辞任した南直哉氏は日経ビジネス(02年12月2日号)の「敗軍の将、兵を語る」欄で、信頼を揺るがしたことを謝しながらも、「安全性には全く問題はないということです」と述べている。

 問題の本質は、維持規格が存在しない中で、判断を現場任せにした点にある。南氏は「現場も、さぞ悩み苦しみながら判断を続けたことでしょう。この点は、責任を痛切に感じています」と反省している。

 これまで国際的にも高く評価されてきた日本のモノづくりは、基本的には現場の技能者の頑張りに支えられている。品質の維持から新技術の導入まで何でも器用にこなしてくれる。こうした現場への経営者の甘えが、今回の一連の不正問題に通底しているのではないか。神戸製鋼は「6つの誓い」を掲げ、「安全かつ安心」の製品・サービスを提供すると宣言しているが、空念仏だったわけだ。

 きれいごとはいらない。コスト、納期の圧力の下で、製造現場が安全基準の運用でどんな現実に直面しているのか、それを経営者はまず知るべきだろう。

【プロフィル】森一夫

 もり・かずお ジャーナリスト。早大卒。1972年日本経済新聞社入社。産業部編集委員、論説副主幹、特別編集委員などを経て2013年退職。著書は「日本の経営」(日本経済新聞社)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(同)など。67歳。