浅草芸者の心意気にほれた 第一勧信、街おこし狙い開店資金融資 (3/3ページ)

店内で踊る鹿島さん(ブルームバーグ)
店内で踊る鹿島さん(ブルームバーグ)【拡大】

  • 新田信行理事長

 信金・信組を取り巻く環境は厳しく、金融庁は合併統合を含めた抜本的な経営改革を迫る。全国信用協同組合連合会の資料によると、経営基盤強化のため9月末現在で7信組が公的資金を導入。今年9月末には甲子信用組合(東京都千代田区)が主力の住宅ローンが低迷した上、今後の事業好転も見込めないと自主解散した。

 しかし、新田氏は「合併は嫌い。むしろ分けたいくらいだ」と意に介さない。「合併した途端に人が見えなくなるのが怖い」という。「合併相手の信組から来た上司を、担当者が鹿島さんは信用できると言葉で説得するのは難しい。共通言語が数字だけになってしまうんです」。大きくなってメガバンクの後を追うのではなく、トップが全てを知っている規模にとどまり、人のつながりに与信をするのが協同組織の生きる道だと信じる。

 「山ほどある需要」

 新田氏の言葉を裏付けるように、業績も伸びている。2013年6月の理事長就任以来、貸出残高は10%増の約2400億円となった。同組合の預貸率は76%と全信組平均(53%)を大きく上回る。直近の貸出約定平均金利は2.2%と国内銀行平均(0.7%)の3倍。2年前に新設した創業支援ローン実績は既に240件を超えた。「創業者や零細事業者は銀行融資を得られず金利5%以上払ってノンバンクで借りることも多い。2、3%で貸せれば需要は山ほどある」

 信金信組など小規模金融機関の経営環境について、松井証券の田村晋一ストラテジストは「後継者難の中小零細事業者の廃業が増えており、メガや地銀以上に厳しい」と分析。第一勧信の掲げる2、3%での融資戦略について「トップの目利き力に依存している面はあるだろうが、人物本位の融資は信組として王道であり、英断だと思う」と評価。一方で、「1980年代なら8~10%で貸し出せたゾーン。日銀のマイナス金利政策でリスク許容度が低下しており、どの信組もまねできる訳ではない」とした。

 浅草の夜は早く、夕方6時ともなると目抜き通りの店は次々とシャッターを下ろし始める。夜が更けても、鹿島さんの店からは明かりと笑い声が漏れる。新田氏の夢は一定の経験を積んだ「芸者衆皆にお店を持たせる」ことだ。京都・祇園に東京の花街が負けているものといえば、夜のにぎわいだと思っているからだ。(ブルームバーグ Takako Taniguchi、Gareth Allan)