日本の「失われた20年」問題 銀行が取れないリスクを取る「直接金融」が解決策となるか (3/3ページ)

 --今年7月、優れた技術やアイデアを発掘するプログラム「三菱UFJファイナンシャル・グループDIGITALアクセラレータ」でグランプリを獲得しました。どこが評価されたと受け止めていますか。

 こちらは建築というよりは、金融という切り口でグローバルな事業展開に挑戦していることが評価されたことが理由の一つと聞いています。今、最も可能性を感じているのがエストニアで、子会社を置いています。国が暗号通貨の発行を計画するなど、さまざまな領域で先進的なIT活用が進んでいますし、現地の法規制がこうしたビジネスを展開しやすいという側面もあります。また、EU域内にあるので、今後、欧州でビジネスを広げていくため拠点としても位置づけています。エストニア以外にもアジアや北米での事業展開も視野に入れて、日々新しいクロスボーダーの証券化スキームを開発しています。

 間接金融の銀行とは共存共栄できる

 --今後の目標は。

 ビジョンは、P2Pベースの非中央集権型の直接金融市場を創ることです。既存のキャピタルマーケットは、国ごとに規制当局が存在し、証券取引所や、証券会社が中央集権的にコントロールしていますが、まだまだ非効率な部分が多く残っていると感じています。そうでなく、テクノロジーを活用しつつ合意形成や情報開示の仕組みをもっと効率化することで、投資家や発行体が自由に低コストで投資できる世界観を実現したいと思っています。

 だが、この新しい市場が銀行をディスラプト(破壊)するとは思っていません。銀行が担っている間接金融と、われわれが担っている直接金融でのエクイティファイナンスは役割が異なります。

 日本はデッドファイナンス(間接金融)が中心で成長してきましたが、経済の発展に直接金融の役割も無視できない。日本の「失われた20年」の原因の一つは、誰もリスクを取らず、次の時代の事業を育てて来なかったからではないかと思います。リスクマネーを出してビジネスを育成することを怠ったからです。

 事業を立ち上げる際にはリスクマネーを出すことができる人からエクイティ性の資金を調達し、事業が安定的に回り始めたら資本コストの低い銀行融資に切り替える。そんな形で既存の金融機関と連携していくことも重要ではないかと考えています。

 鬼頭武嗣(きとう・たけし)

 クラウドリアルティ社長。2005年東京大学工学部建築学科卒。07年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了、ボストンコンサルティング・グループ入社。2010年メリルリンチ日本証券入社。投資銀行部門にて不動産の開発証券化に関するアドバイザリー業務などの案件を担当。14年クラウドリアルティを設立し現職。

 (クラウドリアルティ社長 鬼頭 武嗣 取材・構成=経済ジャーナリスト 丸山隆平)(PRESIDENT Online)