【eco最前線を聞く】新型ファン採用で省エネと快適さ両立


【拡大】

  • 新型ファン「パーソナルツインフロー」を搭載した「霧ヶ峰FZシリーズ」室内機の構造(三菱電機提供)

 □三菱電機静岡製作所 ルームエアコン製造部技術第一課専任・中川英知氏

 三菱電機は新世代型の投入でルームエアコンの高い省エネルギーと快適性の両立を図っている。その中核をなす技術は左右2つが独立して駆動する世界初の新型ファンを搭載し、室内機の送風構造をほぼ50年ぶりに一新した「パーソナルツインフロー」だ。静岡製作所ルームエアコン製造部技術第一課専任の中川英知氏は「大型リビングルーム向けに最適な技術で、今後もブラッシュアップに努めたい」と、さらなる高みを目指す。

 ◆5年分の改善を1年で

 --新世代型開発の経緯は

 「室内機には当社が1967年に世界で初めて採用した円柱状の羽根で送風する『ラインフローファン』が一般的に使われている。奥行きをとらない円柱形状は室内機の薄型化に最適で、今やエアコンの標準だ。しかし、省エネ値をさらに改善できる機構はないかと考え、プロペラファンによる送風について2008年頃から基礎研究を進めてきた。試行錯誤の末にパーソナルツインフローの開発にこぎ着け、15年10月に『霧ヶ峰FZシリーズ』を発売した」

 --プロペラファンを採用した理由は

 「男女で適した温度が違うように、省エネ、快適性の観点からも部屋全体よりもピンポイントで冷やす方が効果的だと分かってきた。その点で、別々に駆動する2つのファンが独立した気流を生む特性が発揮できる。プロペラファンは室内機の奥行きをとる点でラインフローファンに劣るとはいえ、スポットで快適な室温とする今の時代にマッチしていると判断し、容量4~9キロワットの大型リビングルーム向け機種で商品化した」

 --省エネの効果は

 「新型ファンに加え、新開発の小型高性能DCモーターとW字型の新構造で熱交換機の搭載量を増やすことで、5年分の省エネを1年で達成できた。具体的には、当社の従来製品が5年間かかった通年エネルギー効率(APF)で13.2%の改善効果を、15年10月発売の16年度モデルは前年度モデルから13.3%と1年でクリアした。その成果が認められ、省エネルギーセンターによる15年度の『省エネ大賞』の製品・ビジネスモデル部門で最高位の『経済産業大臣賞』を受賞した。1日に発売した18年度モデルは室外機での省エネに取り組んだ。エアコンは消費電力の大半を占める圧縮機の効率化が省エネの決め手となる。この点、世界で初めて2種類のDCモーター結線を持つ『アクティブスイッチコンプレッサー』などの採用で、16年度モデルで1558キロワット時の期間消費電力を1492キロワット時に縮小した」

 ◆AIが体感温度を予測

 --数値に表れない省エネ、快適さもある

 「エアコンは使い方によっても省エネ効果が変わる。『暑がりさんも寒がりさんも同時に快適。』とうたったテレビCMのように、エアコンが室内の環境や個人の体感温度を判断し、実使用での省エネや快適さを目指した。その役割はセンシング技術にあり、18年度モデルは世界で初めて人工知能(AI)が体感温度を予測する赤外線センサー『ムーブアイmirA.I.(ミライ)』を搭載した」

 --「霧ヶ峰」ブランドは誕生から今年で50年を迎えた

 「『霧ヶ峰』は今年8月、ラインフローファン採用のエアコンで世界最長寿ブランドとしてギネス世界記録に認定された。技術者にはある種、重い責務ながら、蓄積した技術を生かしパーソナルツインフローを業界の追随を許さない気流を重視した新世代型エアコンのスタンダードに位置づけたい」(鈴木伸男)

                   ◇

【プロフィル】中川英知

 なかがわ・ひでとも 九州大学大学院工学研究科修士課程修了。1999年入社。ルームエアコン製造部に配属以降、国内ルームエアコンの量産開発業務に携わる。42歳。福岡県出身。

今、あなたにオススメ
Recommended by