「ブラザー×コメダ」異色の社長対談・前編 名古屋企業が東京移転を検討もしない理由 (3/6ページ)

 東京に本社を移す気は「全然ない」

 --事業の拡大とともに東京に本社を移す企業も多いですが、名古屋から東京に本社を移す予定はありますか。

 【小池】まったく考えていません。もともと市内の熱田区に創業家があったから名古屋を本拠地にして、製造を担うブラザー工業の工場も、名古屋市や愛知県内に集まっています。そうした経緯で従業員も中部地区の出身者が多く、地元の大学や高校とのパイプも太い。それらを断ち切って東京に移す必然性はありません。

 東京・京橋に自社ビルの東京支社もあります。必要に応じて出張すればよく、IRなど東京で仕事をしたほうが都合のよい業務は、担当者が常駐すればよい。全売上高の8割以上が海外で、海外出張は中部国際空港も利用できます。多くの社員が名古屋から移り、オフィスの増床から社宅手配まで、多額なコストをかけて本社機能を移す理由はないのです。

 【臼井】喫茶業のコメダにとって、喫茶王国と呼ばれる愛知県で毎日来るお客さんに鍛えられた強みもあります。国内各地に出店しても「名古屋発祥の喫茶店」というブランドイメージは高い。わざわざ東京に移す理由はないし、この情報化社会で、名古屋という不利もありません。私は以前、スポーツ用品メーカーのナイキにもいましたが、ナイキの本社はポートランド近くのビバートンという町にある。すごい田舎ですが、あの自然の中からスポーツを楽しむ企業文化が芽生えたと思います。特にBtoC(企業対消費者)企業にとって本拠地は大切でしょうね。

 名古屋なら人材も豊富にいる

 【小池】先ほどお話ししたように、地元の大学や中部地区出身者が多いブラザーですが、いわゆる“就職競合”として学生が掛け持ちするのは、トヨタ自動車やデンソー、アイシン精機などのトヨタ系企業です。だいたい負けます。優秀な人材を獲得したい一面はありますが、「寄らば大樹」という意識の人を追いかけても仕方がない。人口の多い地域ですから、それ以外の反骨心のある人に入社してもらい、グローバルで戦う人材育成をしています。

名古屋の喫茶文化が人材の質を向上