【モノづくり激震 不正の構図(下)】「アナログ経営」の限界 現場任せで品質・競争力低下 (3/3ページ)

コベルコマテリアル銅管の秦野工場では、銅管のJIS規格の認証が取り消された=神奈川県秦野市(万福博之撮影)
コベルコマテリアル銅管の秦野工場では、銅管のJIS規格の認証が取り消された=神奈川県秦野市(万福博之撮影)【拡大】

 さらに、ドイツでは設備や工場間をネットワークでつなぎ、人工知能(AI)で分析して生産効率を上げる「インダストリー4.0」と呼ばれる取り組みが国を挙げて推し進められている。

 ドイツ大手部品のボッシュはドイツや中国の工場で部品にタグを付けて工場内での流れをリアルタイムで把握する技術などを駆使し、ブレーキ部品の生産効率を1年足らずで25%向上させた。フォルクマル・デナー会長は「特に高コスト国で利益をもたらす」と語る。

 モノのインターネット(IoT)やAIの技術を使ってデータ改変の余地をなくすだけでなく、同時に生産性を高めるのが世界のモノづくりの新たな潮流だ。日本生産性本部によると、2000年に米国に次いで2位だった日本の製造業の労働生産性は14年に11位に転落した。強い現場に頼り続けようとする「アナログ経営」が、品質だけでなく競争力の低下も招いているのではないか。

 AIやIoTの導入には日本企業も力を入れ始めたが、日本総合研究所の浅川秀之上席主任研究員は「生産効率に重きを置き、改竄防止などの視点が乏しかった」と問題点を指摘する。競争の前提が変わる時代に求められるのは発想の転換だ。日本の製造業が信頼を取り戻すには、デジタル技術だけでなく、それを使いこなす経営の変革も必要な時期に差し掛かっている。

 この連載は、井田通人、高橋寛次、万福博之、高木克聡が担当しました。