【千葉発 輝く】芳源マッシュルーム 添え物」脱却、消費者に本物のおいしさ (1/5ページ)

マッシュルーム生産の菌舎を案内する菅佐原芳夫社長(左)と菅佐原徹哉専務=千葉県香取市
マッシュルーム生産の菌舎を案内する菅佐原芳夫社長(左)と菅佐原徹哉専務=千葉県香取市【拡大】

  • 「すみこさんの肉味噌マッシュルーム」

 洋食の付け合わせなどでおなじみのマッシュルーム。しかし、メインディッシュの添え物に甘んじる扱いに異を唱え、本物のおいしさを消費者に伝えようと励む生産者がいる。千葉県香取市の「芳源(よしもと)マッシュルーム」だ。「いいだしがとれシイタケよりもおいしい。しかし、正しく知ってもらえていない」。同社の菅佐原芳夫社長(63)は現状を嘆く。

 ◆国内生産をリード

 農林水産省によると、2014年の国内のマッシュルーム収穫量は約5600トンだった。このうち約2000トンが千葉県産で、ほぼすべてを同社が生産する。昨年は約3000トンと年々伸び、岡山県の農場とともに国内生産をリードする有数の生産者だ。

 実は、国内のマッシュルーム生産のピークは1974年までさかのぼり、年々減少の一途をたどってきた。日本人の消費量は当時の5分の1にすぎないという。原因の一つが原料の問題。マッシュルームは藁(わら)を発酵させて作る。「昔はトラックで米農家を回り脱穀した藁を1年分かき集めた」という重労働だったが、その藁が米農家の機械化・兼業化とともに入手しづらくなった。田んぼにコンバインが入り、藁を裁断・焼却してしまうためだ。現在は日本中央競馬会の美浦トレーニングセンター(茨城県美浦村)で使われた馬厩肥(ばきゅうひ)を入手し、年間を通じて安定的に藁を確保している。

 だが、藁不足以上に深刻だったのが、「マッシュルームは洋食の添え物、増量材」という誤ったイメージの固定化だった。64年の東京五輪や70年の大阪万博など、洋食の広まりに伴ってマッシュルームも日本人に食べられるようになった。国内生産では間に合わず、中国産のマッシュルームが大量に流入した。