【フロントランナー 地域金融】北都銀行の地方創生の取り組み(6)

ウェンティ・ジャパンの佐藤裕之社長
ウェンティ・ジャパンの佐藤裕之社長【拡大】

 ■地場資本の風力発電で地域活性

 「(父親が代表を務める)羽後設備に入社した頃には既に秋田は日本一の少子高齢社会になっており、年間約1万人の人口減少が始まっていました。日本人1人当たりの年間消費額は約127万円といわれ、消費額だけ見ても年間127億円の消失…。地方と中央の格差に愕然(がくぜん)とし、そのときからずっと秋田を元気にするために何ができるか考え続けています」。こう話すのは、北都銀行が風力発電事業を支援しているウェンティ・ジャパンの佐藤裕之社長だ。

 佐藤社長が風力発電事業に関心を持ったのは約10年前。取引先のBCP策定を手伝うに当たり、緊急電源として風力発電と蓄電池施設を検討したのがきっかけだ。ただ、固定価格買い取り制度のなかった当時はコスト面で導入のハードルが高く、諦めざるを得なかったという。

 一方、北都銀行では2012年にスタート予定だった「再生可能エネルギー固定価格買い取り制度」に着目し、風力発電の新会社を設立する構想が持ち上がっていた。そこで白羽の矢を立てたのが佐藤社長だった。

 当時、秋田県には約100基の風車があり、全国4~5位の風力発電導入量があった。しかし、そのほとんどは中央の大手資本によるもの。「このままでは秋田は東京や他地域のエネルギー植民地になってしまう」との危機感を共有するとともに、「風力発電が必ずや秋田を活性化させる」という同じ信念を抱いていた北都銀行と佐藤社長が手を取り合うのは必然だった。

 12年7月、「第2回世界自然エネルギーフォーラム」(秋田開催)で、北都銀行の町田睿会長が新会社の設立を発表。同年9月に羽後設備と関連会社、秋田県を含む6道県で風力発電所を運営する市民風力発電、フィデアグループなどの出資でウェンティ・ジャパンが設立された。社名の「ウェンティ」は、ウインド(風)の語源であるラテン語。「日本の風力発電プレーヤーとして確固たる地位を占めたい」という願いを込めて命名されたという。

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 (編集協力)近代セールス kindai-sales.co.jp