【リーダーの素顔】ジュピターショップチャンネル社長・田中惠次さん


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 ■検品・返品を自社で行い信頼築く

 24時間365日生放送のテレビ通販番組「ショップチャンネル」を運営する、ジュピターショップチャンネルの社長に今年4月就任した。昨年度の売上高は業界トップの1549億円で、20期連続増収を達成。視聴可能世帯は2920万世帯に上っている。1、2日には「心おどる、大創業祭」と題した特別番組も終え、新たなスタートを切っている。

 --住友商事に勤務していた

 「三十数年のキャリアのうち20年ほどはファッションや繊維関係でした。当社が扱う商品も約3割はファッション関連商品で、私の得意分野といえるのではないでしょうか。前社では小売り事業も担当しており、化粧品や食品もなじみ深い分野です」

 --扱う商品の特徴について

 「ファッション、化粧品、家電、食品など1週間に約500点の商品を紹介しますが、食品メーカー『カゴメ』と共同開発した野菜ジュースなど、半分以上はショップチャンネルでしか買えないオリジナル商品です。ほかは他社でも買えるけれど、仕様や価格を差別化した商品など。ショップスターバリューという日替わりのその日一番のおすすめ商品を決める会議には、私自身ができる限り出席しています」

 --社長としての理念は

 「経営理念は『心おどる、瞬間を。』です。感動と喜びに満ちた毎日をお届けするのを唯一のよりどころにしています。ただし、いくら感動を共有しても商品の品質が悪ければ駄目です。私の信念はビジネスは信用が全てだということ。信頼なしには経営理念も達成できないので、当社や社員一人一人が信頼されることが全てだということは常に言っています。社内には商品を買い付けるバイヤーなどプロがたくさんいるので、彼らが最も専門性を発揮できる環境をつくりたいですね」

 --信頼を確保するため行っていることは

 「商品は原則として全て当社が検品を行い、返品も当社が受け付けます。ショップチャンネルブランドで勝負しているということです。社内には品質管理や広告表示をチェックする組織があり、品質を過大に宣伝していないかなども厳しくみます。生放送なので、コールセンターなどを通じて、お客さまから洋服の後ろのシルエットを見たいという要望があれば、スタジオに連絡して瞬時に放送内容も変更します」

 --洋服が売れないといわれ、若者のテレビ離れも指摘されています

 「ファッション分野の売上高は去年も今年上半期も伸びています。生産者とバイヤーが生放送で丁寧に説明しているので、付加価値を感じてくださっているのでは。また、当社は特に年齢のターゲットは設けていません。それよりも、まだショップチャンネルを知らない方に知っていただく余地の方が大きいのだと思います」

 --今後の経営課題は

 「ライフスタイルの多様化に対応したコンタクトポイント(顧客接点)の充実です。既にインターネットで放送動画を見られるようにしたり、アプリを作ったりしていますが、増やしていきたい。購入履歴を基にしたお勧め商品情報の提供などデジタルマーケティングも駆使しつつ、お客さまと対話をしながら商品を売る生放送は一種の『コト消費』でもあります。そうしたデジタルとアナログの融合をもっと高度化していきたいと考えています」(西岡瑞穂)

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【プロフィル】田中惠次

 たなか・けいじ 1961年3月生まれ、神戸大経営学部卒。83年、住友商事に入社。イタリア住友商事取締役繊維部長、住友商事ライフスタイル・リテイル事業本部長などを歴任。2010年にジュピターショップチャンネル取締役(非常勤)となり、17年4月に社長。大阪府出身。

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 ≪DATA≫

 【スポーツ】「スポーツ観戦は何でも好き」で、サッカー、テニスなどの主要大会は録画し、週末に見る。日課のウオーキングは早朝に自宅や会社周辺で1時間以上。「大人の遠足」と呼ぶゴルフは一時は年間50ラウンドペースだったが、社長就任以降は「暇がない」。柔道は二段。

 【読書】大学時代に読書家の友人に勧められて以来、歴史小説にはまった。特に司馬遼太郎の「竜馬がゆく」はこれまで10回以上読み返したお気に入り。「青春物語で青臭いが、何年かに一回読みたくなる」といい、最近も旅先に全巻持参した。

 【家族】妻と1男1女。司書資格を持つ妻とは読書が「共通の趣味」。

 【ファッション】イタリア駐在の影響か、スーツは「風合いや光沢、素材感が独特なイタリア製の生地を選ぶ」。現地で学んだのは好きな服なら同じものを何着持っていてもいいという考え方。ファッション先進国ながら古い町並みを大切にするイタリアのように「自分が気に入ったものは大事に使う」。