【テクノNavi】鹿島、コンクリ耐凍害性向上の新手法

カインドエアを添加する手法で施工した擁壁。厳冬期を経ても凍害による劣化が発生しなかった
カインドエアを添加する手法で施工した擁壁。厳冬期を経ても凍害による劣化が発生しなかった【拡大】

 ■アクリル系樹脂で気泡代替

 コンクリートの劣化につながる、寒さによるひび割れや剥離を防ごうと、鹿島は岩手大や日本大、デンカ(東京都中央区)との共同で、耐凍害性を向上させた新手法を開発した。コンクリートに含まれる水分の凍結時の膨張などを緩和する「気泡」を、アクリル系樹脂を原料とした中空ボールで代替する。鹿島は、積雪寒冷地域におけるさまざまなコンクリート構造物への積極的な適用を目指す。

 凍害は、厳寒期にコンクリートに含まれる水分が凍結・融解を繰り返す際の圧力でひび割れや表面の剥離を起こす現象。従来の手法では、コンクリート製造時に界面活性剤の一種などの化学混和剤を添加して微細な気泡を作り、この気泡が水分の凍結(膨張)や融解(縮小)に伴う圧力を緩和している。しかし、コンクリートを締め固めたり、硬化させたりする過程で気泡が消失することがあり、コンクリート全体に適量の気泡を残すには高度な技術が必要だった。

 鹿島は、デンカが開発したアクリル系樹脂を原料とした中空ボール「KIND AIR(カインドエア)」に着目し、気泡の代替とすることにした。しかし、カインドエアは直径0.08ミリ程度と非常に軽量なため、添加する際に風で舞い上がってしまう恐れがあった。鹿島の技術陣は、水溶性の袋に梱包(こんぽう)して袋のまま生コン工場のミキサーや生コン車に入れることで、最適な量をコンクリート全体に行き渡らせることを可能にした。岩手大や日本大からは、コンクリート表面の剥離への抵抗性や、道路橋のコンクリート床版の耐久性を高めるためのデータやノウハウの提供を受けた。

 鹿島は、新手法を適用した場合に凍害に対する耐久性が従来手法と比べて約10%向上することを確認。材料費は若干上昇するものの、コンクリート構造物の耐凍害性向上と、長寿命化による維持管理費の低減が期待できるという。