【21世紀を拓く 知の創造者たち】レンゴー「ガイアフォトン」

杉山公寿さん
杉山公寿さん【拡大】

  • 花谷俊和さん
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 ■環境に優しい蛍光体 幅広い用途、新たな市場創出へ

 レンゴーが開発した「ガイアフォトン」。既存の無機蛍光体とは異なり、環境負荷の大きいレアアースを使用しない銀含有ゼオライトの蛍光体で、製造時のエネルギーを大幅に抑えられるのが特徴だ。安価で大量生産もできることから、照明だけでなく、インキ、塗料、化粧品、センサー、雑貨など幅広い用途での利用が可能で、新たな市場の創出にも大きな期待がかけられている。そこで今回、「ガイアフォトン」の開発に携わった3人の技術者に、製品の特徴や業務のやりがい、今後の目標などを聞いた。

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 □杉山公寿さん 夢は航空宇宙材料

 ▽すぎやま・こうじゅ 中央研究所商品開発第二部長

 □花谷俊和さん 性能の評価に苦心

 ▽はなたに・としかず 中央研究所研究企画部研究企画課担当課長

 □藤木伸爾さん 違う視点で解決法

 ▽ふじき・しんじ 中央研究所商品開発第二部商品開発課

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 --レアアースを使わない「ガイアフォトン」とは、どのようなものですか

 藤木 レアアースは地球上の限られた地域に偏在する希土類という元素で、現在、ほとんどの蛍光体に使用されています。蛍光体で一番多いのが水銀蛍光ランプで、いわゆる一般的な蛍光灯です。蛍光灯は白色のガラス管ですが、これは透明なガラスの内側に白い蛍光体が塗布されているためで、その中にレアアースが使われています。レアアースの大半は中国からの輸入で、採掘の際に管理が不十分だと鉱物を溶解する際の硫酸が漏出したり、アメリカやオーストラリアの鉱山ではトリチウムを含む放射性鉱物が副産物として産出するといった環境上の問題もあります。蛍光体の市場はレアアースの価格に影響を受けやすいという状況ですが、「ガイアフォトン」はレアアースを使わずに、乾燥剤や脱臭剤などに用いられるゼオライトと抗菌作用がある銀を含有した蛍光体です。

 --開発のきっかけは

 杉山 抗菌や消臭効果のある銀含有ゼオライトを段ボールなどのパッケージ材に活用しようと考えて研究を始め、「セルガイア」という高機能繊維を開発しました。「セルガイア」は当初、パッケージに使用する予定でしたが、通気性に優れていることが確認されたため、フィルター用途としての展開を考えました。その後、「セルガイア」をもとにした新規事業を模索している中で、ゼオライトに銀を含有したら発光することを発見しました。しかし、事業性が見いだせずに、その開発は一時ストップしていました。それが中国漁船問題でレアアースに注目が集まり、同時期にLEDの普及が加速したことで、「ガイアフォトン」の開発が本格的にスタートしました。レアアースがなくなると蛍光体が作れなくなってしまいます。「ガイアフォトン」はレアアースフリーなので、役に立つと考えたわけです。

 --今回の開発ではどのような業務を担当しましたか。また、開発を進めていくうえで苦労した点は

 花谷 銀含有ゼオライトの発光メカニズムの解明を主に担当しました。蛍光体の評価を行うことが会社として初めてのことで知見がないため、商品化できる性能に達しているのかどうかを評価するのが大変でした。発光メカニズムの解明には大学の研究機関とも連携し、銀含有ゼオライトに銀以外の成分を加えるとどうなるか、含有量を変えるとどうなるかなどを繰り返しながら評価してきましたが、突き詰めるのは難しいです。それでもこれまでの努力の結果、少しずつ前進しています。

 藤木 銀やゼオライトの成分の改良を担当しました。今も話があったように大学とも連携しましたが、銀含有ゼオライト蛍光体を専門に研究している大学や機関がないので、レアアースを使った蛍光体をもとに評価と改良を進めました。しかし、顧客から銀含有ゼオライト蛍光体の性能に改善要望が出てきても、どこをどう改善したら性能の向上につながるのかが分からず苦労しました。そういう意味では、まずはなぜ発光するのかということを解明することが重要だと思いました。

 杉山 このプロジェクトの総括として大変なことも多いですが、新しい発見がありますので楽しみの方が大きいですね。ただ、研究開発については一定の成果が得られたと言っても、この技術を今後事業化していくことへのプレッシャーはあります。また、当社では、今回のようなパッケージングとの関連性が低いプロジェクトは過去になかったので、新規事業として立ち上げることの難しさはありました。プロジェクトでは、大学だけではなく企業との協業体制を推進していくことも大変でしたね。

 --これまでの経験が、今回のプロジェクトに役立っていることはありますか

 杉山 大学での専攻を含めてこれまで無機化合物の研究を長く続けてきました。当社ではゼオライトを木材パルプと複合化した高機能性パルプである「セルガイア」を開発し、新規事業開発の立ち上げを経験しました。当社の中でも新しいことに挑戦する姿勢は前向きだと思っています。

 花谷 大学では無機化合物の分析を専攻しており、入社後も研究所で分析の業務を担当しました。その後、「ガイアフォトン」の分析に携わったので、これまで培ってきた経験は役に立っていますね。分析に使用する装置についても、大学時代の先輩や後輩が分析機器メーカーに勤めていたことでいろいろと助けていただいたこともありました。

 --どんな時に仕事のやりがいを感じますか

 杉山 今まで誰もレアアースフリーの蛍光体を事業化したことがありません。それを蛍光体メーカーではない当社が、研究開発して世の中に出していくということにやりがいを感じますね。『私たちのような専門家ではない野武士集団が正規軍に勝つ』ということを醸し出せて行けたらいいなと思っています。

 藤木 大まかな方向性をいろいろと試してみても、顧客の方からの改善要望を解決できないこともありますが、少しでもヒントになるようなことが見つかった時は楽しいですね。私は大学時代に現在のプロジェクトとはつながりのない研究をしていたので、違う視点から課題解決の方法や発想が見つけ出せればと思っています。

 花谷 ほとんど何も分からないところから、少しずつでも発光メカニズムの解明に近づいていると感じられるのがやりがいです。何度トライしても結果が出ずに行き詰ってしまうこともありますが、少しでも前に進んだ時にはうれしさを感じますね。

 --今後の目標は

 花谷 まずは「ガイアフォトン」を製品として販売し、最終的には会社の事業として、成長させていきたいです。現在はLED照明用の蛍光体が最大の目標となっていますが、この素材は機能的にLED照明用の蛍光体にとどまらないと思いますので、他にどういう用途で活用ができるかを考えていきたいです。

 藤木 常に新しいことにチャレンジしていきたいです。蛍光体でも今まで思いつかなかったアプローチをはじめ、蛍光体から派生して新しい分野での活用法などを目指していきたいです。ただ、現在の蛍光体やLED分野については、今後もしっかりとフォローしていきます。

 杉山 新規事業というのは、どの会社も難しいと思います。これまでの経験を活かし、「ガイアフォトン」を事業として成功させることに大きなインセンティブを感じています。会社の期待に応えられるよう、今後しっかりと事業化に取り組んでいきます。新規事業としては、「セルガイア」が「ガイアフォトン」の開発に結びつきました。今後、「ガイアフォトン」を事業として成功させ、将来的には当社が航空宇宙材料を開発するぐらいの夢を後輩に託したいです。

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【会社概要】レンゴー

 ◇設立=1920年5月2日

 ◇本社=大阪市北区中之島2-2-7 中之島セントラルタワー

 ◇資本金=310億6600万円(2017年3月末現在)

 ◇売上高=5454億8900万円(17年3月期・連結)

 ◇従業員数=1万6038人(17年3月末現在・連結)

 ◇事業内容=製紙、段ボール、紙器、軟包装、重包装、包装関連機械、その他

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 フジサンケイビジネスアイは「独創性を拓く 先端技術大賞表彰制度」を設けております。このシリーズは2017年の運営に協力いただきました協賛企業の研究開発活動を紹介するものです。