【高論卓説】台湾企業に日本の半導体が敗れたワケ 「下請け」嫌い見失った分業化の流れ (2/3ページ)


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 海外で工場を持たないファブレスの半導体企業とタッグを組み、半導体の製造部分を一手に引き受ける。TSMCの名前は、一般人は誰も知らないが、スマホや衛星利用測位システム(GPS)、Wi-Fi(ワイファイ)などあらゆる製品に組み込まれている。TSMCの生産ラインに万が一、大きなトラブルが起きたら、米アップルのiPhone(アイフォーン)は供給困難に陥ってしまう。

 張氏は1931年生まれ。米国で機械工学を学び、草創期の半導体産業で働いた。87年に台湾でTSMCを設立した。このとき57歳。経営者としては遅咲き中の遅咲きだ。週50時間以上働かないのがモットーで、社内派閥を一切許さず、顧客と株主、社員の利益のバランスを重視する。創業者としての独裁的なリーダーシップを正しく発揮した例といえるだろう。

 TSMCの受託生産は、他の企業よりも1、2割割高だ。それでも、技術の高さ、研究開発への努力、トイレに入るにもICカードを使わせる秘密保持の徹底ぶりで、世界の顧客の信用を勝ち取った。

 企業には栄枯盛衰がつきもので、今日の勝者は明日の勝者とはかぎらない。だがスマホやこの先の人工知能(AI)の時代に必要な半導体事業に、なぜ「技術の日本」が勝利できなかったのか。日本人としては考えざるを得ない。

 かつて張氏はこう語っていた。

「これが日本の半導体産業が落伍した原因だ」