【高論卓説】台湾企業に日本の半導体が敗れたワケ 「下請け」嫌い見失った分業化の流れ (3/3ページ)


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 「日本企業は半導体の下請けを、まともな商売と思っていなかった。これが日本の半導体産業が落伍(らくご)した原因だ」

 90年代、日本の半導体は世界を圧倒していた。現在、当時トップ10の日立、NEC、富士通らはレースを降り、経営破綻問題で虎の子の資産とされた東芝の半導体事業の規模もTSMCの5分の1に過ぎない。

 鴻海をかつて「しょせんは下請け」と見下しながら、のみ込まれたシャープも同じだ。そもそも「下請け」という日本語が良くない。グローバル化で上流と下流の分業制が確立する中、上下関係を想起させる「下請け」という古い概念は成立しない。

 そして、ブランド名はむしろ邪魔になることもある。その一点に張氏は賭け、成功を収めた。

 そんな1人の台湾人経営者のことを、この引退を機に日本人はもっと知るべきである。

【プロフィル】野嶋剛

 のじま・つよし ジャーナリスト。朝日新聞で中華圏・アジア報道に長年従事し、シンガポール支局長、台北支局長、中文網編集長などを務め、2016年からフリーに。49歳。『ふたつの故宮博物院』『銀輪の巨人 GIANT』『台湾とは何か』など著書多数。