【経財論】地球儀俯瞰した温暖化対策 経団連副会長・木村康氏


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 昨年11月に、全ての主要排出国が地球温暖化対策に取り組むことを約束する、歴史的な国際枠組み「パリ協定」が発効した。今年6月に米国が同協定からの脱退を表明する中、2018年の詳細ルール採択に向けて、現在、交渉が行われている。一方、世界全体の温室効果ガス排出量は増加の一途をたどっており、今後も途上国を中心に増加が見込まれる。地球規模の課題である温暖化問題の解決に向けて、環境と経済の両立を前提に、「地球儀を俯瞰(ふかん)した対策」が今求められている。

 ◆先進国と途上国に隔たり

 経団連では毎年、気候変動枠組条約の締約国会議(COP)に代表団を派遣している。11月にドイツで開催されたCOP23(第23回締約国会議)にも、私を団長とする代表団が参加し、主要国の官民関係者との意見交換やサイドイベントの開催などを通じて、政府交渉をフォローするとともに、わが国経済界の取り組みや考え方を発信した。

 COP23では、パリ協定の詳細ルール採択に向け一定の進展が見られたが、依然として、先進国と途上国の意見の隔たりは大きい。同協定は、今後の国際協調の基礎となるものであり、世界第2の排出国である米国の協定残留を引き続き、粘り強く働きかけるとともに、先進国と途上国の二分論を牽制(けんせい)することで、協定の実効性と国際的な公平性を確保する必要がある。

 ◆世界に誇る省エネ技術

 パリ協定は、世界全体で温室効果ガスの長期・大幅削減を目指す枠組みであり、全ての締約国は20年までに、50年頃を念頭に置いた長期戦略を国連に提出することが招請されている。日本は産業部門を中心に、世界に先駆けて温暖化対策を講じている。今後も国内の排出削減に不断に取り組んでいくが、日本の温室効果ガス排出量の世界シェアは3%程度にすぎない。国際社会より一周先を走る日本としては、今後、地球規模での排出削減に資する戦略を策定することが重要である。

 温暖化対策は、産業構造や経済、国民生活に大きな影響を与えることから、「環境と経済の両立」を前提として、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」に貢献するものでなければならない。また、日本では温室効果ガスの約9割を「エネルギー起源二酸化炭素(CO2)」が占めることから、「S+3E(安全性=Safety+安定供給=Energy Security、経済効率性=Economic Efficiency、環境への適合=Environment)」を基本的な視点としたエネルギー政策にも沿う必要がある。

 これらを踏まえ、講じるべき対策の方向性として、「グローバル」「バリューチェーン」「イノベーション」の3つを掲げたい。日本は世界に誇る優れた省エネ・低炭素型の技術を多数有しており、製品・サービスの国内外での展開、省エネ技術やインフラシステムなどの海外移転などを通じた貢献のポテンシャルは大きいと考える。また、長期にわたる大幅削減は既存の技術ではなし得ず、イノベーションの不断の創出に取り組むことも不可欠である。

 ◆経済界の役割

 経団連では、経済界の自主的な取り組みとして、1997年から「環境自主行動計画」、2013年からは同計画の発展型である「低炭素社会実行計画」を推進し、(1)国内事業活動を通じた排出削減(2)多様な主体の連携によるライフサイクルを通じた削減(3)途上国などへの技術・ノウハウの移転などを通じた国際貢献(4)革新的技術開発-の4本柱で地球温暖化対策に取り組んでいる。

 経済界は自主的な取り組みを通じて、京都議定書の第1約束期間(2008~12年)に1990年比で平均12.1%のCO2排出削減を達成するなど、着実に成果をあげてきた。引き続き、「低炭素社会実行計画」を通じて、日本の中期目標「2030年度(13年度比)26%削減」の達成に貢献していくとともに、「地球儀を俯瞰した対策」の一翼を担うべく、グローバル・バリューチェーンを通じた削減貢献の取り組みを一層強化し、その貢献ポテンシャルを国内外に発信してまいりたい。

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【プロフィル】木村康

 きむら・やすし 慶大経卒。1970年日本石油(現JXTGホールディングス)入社。JXホールディングス取締役、会長などを経て、2017年4月JXTGホールディングス会長(現職)。14年から経団連副会長。69歳。