「その内容は価格に伴っているか」 “日本一”のラーメン店「蔦」だからこそできた値下げ (1/8ページ)

 2015年12月、東京・巣鴨の「蔦(つた)」が、ラーメン専門店として初めて「ミシュランガイド」の一つ星を獲得した。1年間に700杯以上を食べる通称「ラーメン官僚」の田中一明氏は「これが日本の誇るラーメンだ」と評価する。だが、蔦は受賞からしばらくして、1杯1000円から900円へと価格を100円下げた。なぜなのか--。

 ※本稿は、田中一明『ラーメン超進化論 「ミシュラン一つ星」への道』(光文社新書)の第1章を再編集したものです。またメニュー名、価格等は取材当時のものです。

 史上初のミシュラン一つ星ラーメン店

 「Japanese Soba Noodles蔦」は、2012年1月26日、東京・巣鴨の地で産声(うぶごえ)を上げた。店主である大西祐貴氏は高校を卒業後、実父が経営する「七重の味の店めじろ」(神奈川県藤沢市、東京都渋谷区で営業、2013年に閉店)で修業。

 一時期、ラーメン業界を離れアパレル業界へと転職し、バイヤーとして活躍するが、胸に期すところがあり、再びラーメン職人の道へ進んだ。再度「めじろ」の厨房に立ち腕を磨いた後、満を持して独立したという経歴の持ち主だ。兄も神奈川県でラーメン店を経営している、ラーメンづくりのサラブレッドと言える。

閉店後に取材に応じてくれた、「蔦」の店主・大西祐貴氏(左)と店長・伊丹敏隆氏(PRESIDENT Onlineより)

閉店後に取材に応じてくれた、「蔦」の店主・大西祐貴氏(左)と店長・伊丹敏隆氏(PRESIDENT Onlineより)

 「蔦」を端的に表現すれば、「日本でも有数の個性派店主が腕を振るう、最もハイレベルな店」。この一言に尽きる。

 そう、それはすなわち、全国約3万5000軒のラーメン専門店のトップに君臨する店ということだ。ここで言う「ハイレベル」とは、ラーメンの味はもちろん、ラーメンづくりに注ぎ込む店主の魂の熱量といったものも含まれる。およそラーメンを創作するに当たって求められる、あらゆる要素が日本一なのだ。

「蔦」のラーメンは、個人の好みの範ちゅうを超えた次元にある