「その内容は価格に伴っているか」 “日本一”のラーメン店「蔦」だからこそできた値下げ (2/8ページ)

 ラーメン愛好家として身も蓋もない発言かもしれないが、料理の味の良し悪しを判断するに当たっては、明確な物差しは存在しない。人それぞれ味の好みがあるからだ。だが、「蔦」のラーメンは、個人の好みの範ちゅうを超えた次元にある。仮に、これまでどんなラーメンを食べても満足したことがない、味に厳しいグルメ評論家がいたとしても関係ない。そんな評論家をもってしても、強引に「美味い!」と言わせてしまうのが、大西店主のラーメンだ。

 メニューの味は変える、レシピは作らない

 人間が美食を愛する生き物である限り、愛されることが確約された、絶対に揺らぐことのないおいしさ。そんな「蔦」のラーメンのクオリティは、ストイックという言葉を超越した、尋常ならざる研鑽(けんさん)によって支えられる。大西店主に改めて話を聞いてみた。

 「創っているラーメンが自分にとって少しでも満足できないものになれば、ためらうことなく直ちに味を見直します」と大西氏は言う。「何らかの形で将来、役に立つのではないか」と、味を変えた後も、変更前のラーメンのレシピを残しておく店主は多い。だが、大西氏は、「過去を振り返っても意味はない」と、レシピを残さないどころか、昔の味の組み立て方さえ、あえて忘れ去る。

 オープン当初から同店の代表メニューは「醤油Soba」(醤油ラーメン)であるが、味を何回変えたのかを、全く覚えていないという。大西氏が自らに課している唯一の決めごとは、新しい素材を試すときは、その素材のみを使って出汁(だし)を採ってみることだそうだ。

 「気になる食材が見つかれば、あれこれ考えずにまずは取り寄せてみるんです。で、その素材だけを使って出汁を採ってみる。そのときに、『この素材は自分と相性が良い』と感じることができれば本格的に採用する。そうでなければ、いくら良さそうな素材であっても躊躇なく切り捨てます」

イメージできない味は創らない