ホンダ、障害者の運転再開を支援 プログラム開発、環境整備

 ホンダが、事故や病気で手足が不自由になった障害者の運転の再開支援に力を入れている。運転の技能や、再開に向けた課題を正しく評価できるプログラムを開発し、200人以上が受講した。今後は各地の自動車教習所と提携して受講できる場所を増やし、障害があっても運転を楽しめる環境を整えていく考えだ。

 障害を負った人が運転を再開するには、運転免許試験場で臨時の適性検査を受ける必要がある。その際には医師の診断書が必要だが、医師からは患者の運転能力をどう評価すればいいか難しいとの意見も出ていた。

 そこでホンダは実際の車やシミュレーターを使い、手足の一部が使えないなどの状況で十分に運転できるかを評価する手法を編み出した。インストラクターが車に同乗し、判断能力に問題ないかも確認する。医師に情報を提供し、患者に運転を認めるかどうかの判断に役立ててもらう。

 担当するのはホンダの安全運転普及本部。交通事故の死者数が急増し「交通戦争」といわれた1970年、創業者の故本田宗一郎の意思で設立された。

 障害を負った人から再び車を運転したいとの要望が多く、2013年にプログラムを始めた。埼玉県など全国に7カ所あるホンダの交通教育施設で訓練を受けられるほか、北海道や長野県の一部の教習所にも知見を提供し、訓練が受けられるようになる見込みだ。担当者は「将来的には全国に広げたい」と話す。

 脳梗塞で左半身が不自由になった東京都の自営業関根義寛さん(58)は今月上旬、ホンダの教育施設「レインボー埼玉」(埼玉県川島町)で講習を受けた。「実際にハンドルを握ることで注意すべき点が分かった。リハビリで手足が動くようになってきたので運転に挑戦したい」と話した。