【老舗あり】愛知県津島市の堀田新五郎商店 和太鼓伝統守り900年 無料貸し出しで普及に尽力 (1/3ページ)

技と心意気が生み出す和太鼓が並ぶ店内=愛知県津島市の堀田新五郎商店
技と心意気が生み出す和太鼓が並ぶ店内=愛知県津島市の堀田新五郎商店【拡大】

  • 太鼓の胴体部分をイメージさせる「堀田新五郎商店」の外観

 愛知県津島市で900年以上の長きにわたって和太鼓を作り続ける「堀田新五郎商店」。熱田神宮や津島神社など地元の著名な神社仏閣の「御用達」と記された黒光りする年季の入った看板が掲げられ、店内は伝統の威厳が漂う。

 数年後の「音」大事

 太鼓作りは木材の目立てから始まる。適度な堅さと美しい木目を併せ持つケヤキが材料に向いており、木曽や飛騨、揖斐などの山地から厳選して買い付ける。そして原木を胴の形に切り抜いて倉庫で3~5年の間、自然乾燥させる。

 切り抜き作業では湿度が低いと木材が割れやすくなるため、標高の高い木曽山脈南端の恵(え)那(な)山(さん)(長野県阿智村、岐阜県中津川市)の山麓にある工場で作業してから、津島で乾燥させることもあった。

 革は、乳牛などの場合は皮に白黒の濃淡がでてしまうため、主に黒毛和牛の皮を使う。なめし革を張る作業は数日かかるが、27代目店主の堀田新五郎さん(48)は「太鼓の本当の音は、4~5年たった頃から鳴り出す。使い込んだときの音を計算しながら、張り具合を定めていく」という。作業は長年の経験と勘が不可欠なのだ。

 上質材料が豊富

 濃尾平野西部に位置する津島市は伊勢湾へと注ぐ木曽川の左岸に位置し、肥(ひ)沃(よく)な堆積土により農業が盛んだ。かつては伊勢湾に面し、尾張と伊勢を結ぶ要衝・津島湊としても発展した。